資産総額9,000万円の父急死→資産総額3,800万円の母も急死…「ダブった相続手続きをどうすれば」「両親の死、悲しむ余裕もない」40代独身長女の大混乱
父親の相続、遺産分割協議が必要だが…亡き母親をどうすれば?
父親の相続手続きでは、相続人の遺産分割協議書が必要になりますが、相続人である母親は亡くなっていますので、当然ですが参加できません。 「この場合、亡くなった母親の相続人である子どもたちが、母親の代わりに遺産分割協議をして、母親の相続分を決めてよいことになっています」 「そうなんですね…」 税理士の説明に、鈴木さんはうなずきました。 つまり、母親の相続も見越したうえで相続割合を決めてよく、とくに法定割合である「財産の半分」には拘らなくてもいいのです。
税理士、母親の財産が基礎控除内になるよう冷静に調整
父親の財産に対する相続税は400万円です。母親には配偶者の税額軽減の特例があるため、全部を母親が相続し、400万円の相続税をゼロにすることも可能です。 しかし次の母親の相続では、母親の財産3,800万円プラス、父親から相続した財産9,000万円が加算された1億2,800万円の財産に対して相続税の申告をするため、相続税は700万円になります。これは得策とはいえませんので、相続税が最小限で済む割合を想定し、父親の財産の遺産分割協議をするようにします。 税理士が試算したところ、母親の財産を基礎控除内にするには、父親の預金の4分の1、1,000万円以内に抑えればよいという結果になりました。母親の財産が基礎控除以内になれば、相族税の申告は不要となります。 その割合でいけば、父親の相続税を90%、つまり360万円子どもが負担することで、母親の相続時の相続税の負担がなくなり、結果として、48%節税できることになります。
居住用の小規模宅地等の特例、オトクに活用するには…
居住用の小規模宅地等の特例を適用できるのは、母親と、同居していた鈴木さんの2人です。どちらに適用してもいいのですが、適用するには、自宅の土地を相続する必要があります。母親が自宅を相続することも可能ですが、相続登記をする必要があるうえ、母親の相続で、同居の鈴木さんがさらに相続する必要があります。 母親が相続してメリットがある1,000万円は、不動産でもいいですし、金融資産でもかまいません。しかし、不動産の場合は相続登記が必要で、15万円程度はその費用がかかります。その点を考えても、やはり自宅は鈴木さんが相続するのが得策です。 基本的には、一次相続(父)よりも、二次相続(母)の相続のほうが、法定相続人の数が減って基礎控除も少なくなります。父親の遺産をすべて母親に寄せると、母の遺産が多くなるため、今回のようなケースでは、母親が相続せずに、子どもたちで相続することが一般的だといえます。 しかし、鈴木さんの両親のケースように、母親の財産の基礎控除の枠が余っているなら、その分程度の財産を相続したことして相続税を減らすこともできます。このような采配については、税理士をはじめとする、専門家のアドバイスに従って判断すると安心です。