土壇場で掴んだスーパーフォーミュラのシート。松下信治に笑顔「信じて乗せていただいているので、何としても優勝を」
2024年スーパーフォーミュラの最後のシートが埋まった。長らく未定となっており注目されていたTGM Grand Prixの55号車には、松下信治が乗ることとなった。 【写真】Juju号もスポンサーロゴ増加! スーパーフォーミュラ第1戦:搬入日の様子 松下はフォーミュラ・チャレンジ・ジャパン、全日本F3といった国内のジュニアフォーミュラでチャンピオンに輝くと、2015年からGP2(FIA F2)に参戦。F1予備軍の猛者たちが集まるカテゴリーで2017年と2019年にはランキング6位を獲得しており、その実力は誰もが認めるところだ。 スーパーフォーミュラには2018年にデビューし、その後F2に復帰。そしてヨーロッパから帰ってきた後はB-Max Racingで約3シーズン半参戦することとなり、2022年には雨の鈴鹿戦で自身とチームにとって初の優勝を記録したが、それ以降は上位争いに絡めないレースが続き、昨年は入賞1回のランキング19位に終わった。 2024年には引き続きスーパーGTのGT500クラスには参戦するものの、スーパーフォーミュラのドライバーラインアップには名前がなかった松下。昨年末にはTGM Grand Prixからテストに参加したものの、今年2月のテストではラウル・ハイマンが55号車のドライバーとして参加。レギュラードライバー候補はハイマンひとりに絞られたと思われていたが、開幕直前になって松下の起用がアナウンスされた。 ただ松下の参戦に関しては金銭面でのハードルが残されているのは確かなようで、現状はハイマンも未だシート獲得を諦めずチームの許可を得て帯同しているというやや複雑な状況。松下も「(資金を)集めないといけないので、頑張るしかないです。簡単ではないですが、やるしかないです」と語る。 とはいえチーム代表の池田和広氏も、松下起用を決めてからスポンサー契約が複数件舞い込んでくるなど、状況が好転していることを明かしている。この思い切った決断により、ポジティブな流れを引き寄せていきたい構えだ。 レースウィーク1週間前になってこの話を聞いた松下は、スーパーフォーミュラに乗るというチャンスを得られることは素直に嬉しいと語る。 「フォーミュラに乗れないことは結構ショックだったので、自分にとってこのチャンスは何というか……ありがたいとしか言いようがないですし、嬉しいですね」 「ヨーロッパから帰ってきて、ラッキーなことにB-Maxさんで乗らせていただきましたが、まだ1勝しかしてないし、自分的にはもっと、それ以上のところにいきたいと思っています。それには乗らないことには始まりませんし、活躍の場があるということに感謝しています」 松下は昨年末に55号車をドライブしていたとはいえ、開幕直前の鈴鹿テストに参加できていないという点はややハンデと言える。しかし松下は「フリー走行で何とか作り上げるしかないですね。あまりネガティブなことは考えずに、現状のベストを尽くすことを考えたいです」と前を向く。 松下にとっては、当然フルシーズンを戦える環境を整えることも重要になるが、まずは何より自身とチームのポテンシャルをフルに発揮し、結果を残すことが求められる。TGM Grand Prixは昨年、大湯都史樹のドライブでポールポジション2回と3位表彰台1回を獲得してその実力を示しているが、まだ勝利はない。 シーズンの目標について問うと、松下はこう答えた。 「目標を掲げてそれを語っていくことで、スポンサーの皆さんやファンの人たちにも声が届きやすいと思っています」 「池田さんにも信じて乗せていただいているわけですし、期待に応えるためには優勝やチャンピオン……そこが何としても大事だと思うので、頑張りたいですね」
戎井健一郎
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