車中泊で「仮設」建築従事 能登半島地震で兵庫の大工 買い物不便も「事情分かった」/兵庫・丹波市、石川・珠洲市
数は少ないが営業を再開した飲食店は、工事関係者らで「満席」。何度か訪ねたが入れず、外食は早々に諦めた。 8月末まで自衛隊が設営する風呂を利用。隊撤収後の9月から、車で15分ほどの隣の能登町の入浴施設に通った。「自衛隊風呂の最終日に一緒になった高齢男性に『明日から風呂どうするの』と聞くと、『昨日、やっと水が通った』と言っていた」。洗濯は、珠洲市内のコインランドリーが使えた。 眠るのは珠洲市民図書館の駐車場。トイレが使える「道の駅すずなり」に近く、車中泊が多い道の駅と違って静かだった。ワンボックスカーの後部座席をフラットにして確保した170センチ四方が居住空間。「ぐっすりは眠れないけれど、身長が170センチないので、横になって休めた」 猛暑の8月、残暑厳しい9月。エアコンをつけたり、後部のハッチバックを開けて網戸にしたりして暑さをしのいだ。トイレに行くにも車を使うので、アルコールはとらなかった。 休日に1時間半ほどかけて半島中部の七尾市に南下し、買い物や外食を楽しむ。大型店舗もあり、ネットカフェで涼めた。 復興支援に従事するのは初めて。被害を目の当たりにし、心が痛んだ。「被災地で暮らすのも、店をするのも、応援に入るのも、大変だと身をもって感じた。お店が再開できても時短営業で、一足飛びに元通りというわけにはいかないことも良く分かった」と言う。 今後災害があり、大工が必要なときは、経験を生かして参加したいと考えている。「知らない人と知らない土地で仕事をしたことで、大きな刺激を受けた。職人として成長もできた」と笑顔を見せた。13日で契約を終え、帰路に着いた。 珠洲市は、247平方キロ。推計人口1万851人(8月1日)。今年1月1日は、1万1721人。住民票を地元に置いたまま市外に避難し、「みなし仮設住宅」(民間アパート)に入居している人もある。