俳優富田望生さん(福島県いわき市出身) 映画に初主演 阪神・淡路大震災を描いた物語「港に灯がともる」
福島県いわき市出身の俳優富田望生(みう)さんは、来年1月17日に全国公開される映画「港に灯(ひ)がともる」で初主演する。阪神・淡路大震災を描いた物語で、発災から30年の節目に合わせて封切られる。富田さんは「見る人の心のよりどころになる存在になればうれしい」と作品への思いを語った。 富田さんが演じるのは阪神・淡路大震災から1カ月後の1995(平成7)年2月に神戸市で生まれた在日韓国人3世の女性、金子灯(あかり)だ。灯は自らの出自や、両親から聞く震災当時の苦労話にさいなまれ双極性障害を発症する。失意の中からさまざまな出合いを経て希望を見い出していく姿を描いている。 富田さん自身は小学5年生で東日本大震災を経験している。災害を直接的には体験していない灯の役づくりに当たっては「撮影中は私の震災の経験や記憶を一切、持ち込まないと決めていた」。 ただ、3月下旬にクランクインする数日前まで震災・原発事故から13年に合わせた東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)のイベントに参加するなど古里の復興と向き合う仕事にも携わっていた。「気持ちの切り替えが難しかった。脚本を開けない日々が続いた」と振り返る。撮影が始まる少し前から神戸市で暮らし、まちの空気を感じ、さまざまな人に会う日々の中で、灯の人物像に理解を深めていったという。
阪神・淡路大震災も東日本大震災も、発生後の歳月の経過に伴い、灯のように災害の直接的な体験や記憶のない世代が増え続けていく。「自分を取り巻くさまざまな環境と向き合う灯を通し、それぞれの暮らしやすさ、生きやすさを見つけてほしい」と語る。 福島県では、福島市のフォーラム福島、いわき市のまちポレいわきで上映する。