会議中に「私のお母さんは……」、社外の人に「ウチの部長さんによれば……」 若者が使う“呼称”がどうにも気になる問題
二重敬称
さらに若者の中には、社内の人間のことを外部の人間の前で呼ぶ際に、尊敬語をつける人も増えているという。定年退職された方には信じられないかもしれないが、他社との会議で「ウチの部の部長さん」や「当社の田中社長さんは……」などと言うのだ。敬意を持つことはいいのだが、かつては入社してすぐに「社内の人間はどれだけエラくても社外では呼び捨てにしなさい」と教育されたものだが、これまた時代は変わるものだ。 メールの書き方にしても、過剰に丁寧になっているという話も聞く。冒頭の宛名のところに「田中部長様」と書くのだ。これも昔は、「部長」と役職を書くだけでそれは敬意を表していることになるから「田中部長」だけでいい、と言われたものだが……。挙げ句の果てには部下に対しても「山田主任殿」とこれまた「二重敬称」のような文化も発生。昭和の敬称マナーは下の世代にうまく継承されなかったということか。 その一方で、敬称の判断に迷うのがフリーランスの人間である。というのも、フリーからしたら雇い主は「外部」の人だし、お金を支払ってくれる大事な「お客様」である。最近30代のフリーライターからこう質問された。
フリーライターの悩み
「取材に行く時、編集者をどう紹介していいのかが分からないんですよ。我々は一体化したチームなので、取材相手からすれば同じようなものですが、『編集担当の近藤です』と言うのは近藤さんとの関係性上言いづらい。カメラマンの場合は普通に『カメラマンの米田さんです』と言ってもおかしくないように感じるのですが…」 ライターと編集者は一緒に企画を立て、二人三脚で仕事を進めていくから「同僚」的な面もある。一方、カメラマンはその現場だけに来るからそれほどの「身内感」はない。だから「さん」でも違和感がないと、若手ライターは考えているようだ。そこで私は以下のように言った。 「本当は『編集の近藤です』と呼び捨てにすべきでしょうが、それに抵抗感がある理由も分かります。かといって『編集の近藤さんです』と言うのもどこか違う。となれば、職種名を言えばいいのでは。『〇〇社の近藤編集者です』と言えば身内感はありつつも、距離が離れている感も出せる」