1カ月前に突然「閉鎖します」。全国で障害者が次々解雇のなぜ、カギは「A型」 5000人、過去最多を5カ月で突破
違いは企業で働く場合は雇用契約を結び、最低賃金など労働関係の法律が適用されることだ。一方、作業所は福祉の領域なので「労働者」ではなく、最低賃金も適用されない。傾向としては、企業で働く人は障害が軽く、作業所は重い人が多い。 この両者の中間的な存在として2006年に誕生したのが前述のA型事業所だ。「企業で働くのは難しいけど、作業所の仕事は簡単すぎる」。障害が軽めのそんな人を主な対象に、国が制度をつくった。 雇用契約を結び、最低賃金が適用される。働く人は福祉の利用者でもあり、労働者でもある。全国に約4600カ所あり、8万人強が働いている。障害の種別を見ると、精神障害の人が最も多く、半分を占める。次が知的障害者で約3割、残りが身体障害者だ。 なぜ「A型」と言うのかというと、いわゆる作業所のほうを「B型事業所」と名付け、区別したからだ。 ▽経営状況の悪い事業所は報酬引き下げに では、A型事業所で今、解雇が続いているのはなぜなのか。それは、A型が福祉の事業所であることと関係している。
障害福祉の事業所には国から毎月、報酬(給付金)が支給される。事業所の種類や利用者の障害の重さなどによって金額が細かく決まっていて、3年に1回改定される。今年は改定の年に当たり、2月に内容が発表され、4月に実施された。その中でA型事業所には大きな変更があった。 A型事業所は原則、事業の収益から障害者の賃金を支払わなければならない。だが、中には国からの報酬や助成金を目当てに事業を始め、障害者には公費から最低限の賃金を払い、利益を上げようとする事業者がいる。以前から問題になっていて、厚労省が2017年に対策を講じた際も、岡山県などで閉鎖と大量解雇が生じていた。 厚労省はその後も事業所に経営改善計画を提出させるなどしてきたが、状況はあまり変わらず、質の低いA型は存続。そこで、今年4月の報酬改定では事業の収益で賃金を支払えていない場合は、報酬を大幅に引き下げた。そのため、経営が成り立たなくなった事業所が閉鎖に追い込まれているのだ。 ▽「国の対応は仕方ないが、賛否両論」