50代なら知っておきたい! 退職金が出たら「住宅ローンの繰り上げ返済」をしたほうがいい?繰り上げ返済の注意点とは?
注意2:「手元の現金」が減ってしまうことに気をつけて
「繰り上げ返済のメリットふたつめの『住居費の負担感がなくなること』は、確かに大きなメリットです。でもその一方で、繰り上げ返済にお金を使ってしまうことで、手元の現金が減ってしまうことを忘れては大変です。 仮に、受け取った退職金を全部使って、繰り上げ返済に回したとしましょう。 その後、車の買い替えをしたくなった場合、ほかに預貯金があればよいですが、そうでなければ、一般的に住宅ローン金利よりも高い金利のカーローンを組むことになるかもしれません。家のリフォームをしたいと思ってもお金がなくて借りることになったり、理想のリフォームを諦める必要があるかもしれません。 現役時代なら、月収やボーナスなど定期的な収入がありますが、定年後の収入は年金が柱となるので、預貯金が少ないことは非常に心もとないものです。 定年後は『いつでも使える手元の預貯金』が大きな心の支えとなります。繰り上げ返済をするとしても、手元に預貯金をしっかり残したうえで検討しましょう」
保険代わりになる“団信”がなくなることにも注意
「さらに、住宅ローンで大事なポイントとなるのが、『団信(団体信用生命保険)』です。 住宅ローンを組む際には、“団信”という、住宅ローン返済者に万一のことがあった場合に返済がなくなるタイプの保険に入るのが一般的です。住宅ローンの繰り上げ返済をすると、この団信の効果が薄れてしまうことを覚えておきましょう。 仮に住宅ローンが2000万円残っているときに、ローン返済者に万一のことがあった場合を考えてみます。 繰り上げ返済をしていなければ、団信によって残りの2000万円分のローン返済がなくなります。ところが、退職金で1500万円の繰り上げ返済をしていたあとであれば、団信によってローン返済がなくなるのは、残りの500万円分だけなのです。『退職金の1500万円がもったいなかった。繰り上げ返済をしなければよかった…』と思うかもしれません。 団信に加入していれば、『住宅ローン返済中』=『保険に加入中』ということになります。退職金を使って繰り上げ返済や一括返済をすることで、『その保険がなくなっても大丈夫?』という点もしっかり確認しておきましょう。 今回は、退職金による住宅ローン繰り上げ返済は、メリットもある一方で、複数のデメリットもあることをお伝えしました。 退職金が出るまでには時間があると思いますので、『我が家の場合はどちらがよいかな』『繰り上げ返済をするとしたら、いくらくらいまでがよいかな』などと、ぜひじっくりシミュレーションをしてみていただけたらと思います」
西山美紀さん マネーコラムニスト・ファイナンシャルプランナー。単に貯蓄額を増やすのではなく、潤いのある毎日のためのお金の使い方・貯め方・増やし方について女性誌やWEBなどで発信するほか、取材・執筆・監修・講演を行っている。現在は早稲田大学人間科学部(eスクール)にて心理学も学ぶ。著書に『お金が貯まる「体質」のつくり方』(すばる舎)、『お金の増やし方』(主婦の友社)など。