「台所は腐海と化し冷蔵庫の食材は液状化」鬱が悪化し、ゴミ屋敷で最期を迎えた女性。相続した数千万の行方は?
つらいことが次々訪れる人生
「しかし信仰を持つこと自体は自由ですし、叔母の人生を思うと、仕方がない部分もあると思っているんです。姪の立場である私から見ても、つらそうな人生でしたから」 麗華さんの母と叔母の姉妹は学生時代、父と弟をつづけて亡くしている。父は水の事故で、弟は災害が原因だった。 不幸中の幸いか、母の実家が資産家だったため経済的に困窮することはなかったが、多感な時期につづけて家族を亡くすのは、想像を絶するつらさだろう。 成人後、麗華さんの母は結婚で隣県へ行ったが、叔母は実家に残り、母親(麗華さんにとっての祖母)との同居という条件をのんでくれる相手と結婚。叔母、叔母夫、祖母の3人で暮らすなか、叔母は20年近く不妊治療を行い、そのあいだに祖母の介護もはじまっている。
真面目に教えを実践する日々
のちに調べた結果、叔母はおそらく不妊治療中に入信していたようだ。 「治療の甲斐あって娘がひとり生まれましたが、叔母にとっては、子どもを授かったのは“信仰のおかげ”なのかもしれませんね」 勧誘のほか、叔母が“教え”として実践していたのはこのようなことだ。 ・仏壇に水を張った器を置き、水面が揺れると「お告げがあった」というサイン ・就寝は夫婦別室でなければならない ・服薬やワクチンは“毒”と考え、断固拒否 門外漢(もんがいかん)から見れば、“水面のお告げ”は、そこに何を読み取るか、自分の心と向き合うワークのようなものだろうか。夫婦別室は、安眠という点では個人的に賛成できる。 いちばん困るのは、医療の拒否だろう。
壊れる叔母、荒れる家
50代に入ると叔母は鬱を発症したが、夫と娘に言われて精神科へ通院したものの、「毒だと教えられている」と、服薬を拒否。症状を悪化させ、家庭内では少しでも注意しようものなら泣き叫び、家事は基本放棄していたようだ。家はゴミ屋敷と化していった。 10年以上かけて状況が悪化していき、ある日首を吊っているところを家族に発見された。 「叔母が自死した後、その夫と娘はさっさと別の土地に引っ越してしまったので、私が屋敷の清掃に行くことになりました。それはもう、凄まじい状態でしたよ。 買い物依存に陥っていたのか、ペットはいないのに動物用のケージがいくつも転がっていたり、開封していない通販の段ボールが山積みになっていたり。台所は腐海と化し、冷蔵庫の食材は液状化。料理が上手できれい好きな人だったのに……と胸が痛くなりました」