「サラリーマンを食い物に、スルガ銀行は真実を見るべき」被害弁護団長
スルガの問題は地銀の不動産投融資問題の一角
── なるほど、不動産業界とスルガ銀行との特異な関係が前提としてあったということですね 河合氏 シェアハウス案件は(スルガ銀行の)融資残高が2000億円なんですよ。今、(スルガ銀行の)第三者委員会がどう言っているのかというと、それだけではないぞと。中古マンションの不正融資、この残高が8000億円ある。そうすると両方で1兆円。スルガ銀行の貸し出し残高は3兆円。3兆円のうち1兆円が不正案件かもしれない、そういう事件です。そして、驚いたことに他の地方銀行でも同じようなことをしていたらしいということがわかってきた。スルガ銀行を通り越して地方銀行全体の問題にまでなってきた。 ── 銀行への信頼そのものが問われかねない。 河合氏 地方銀行がやっている不動産投融資、これは大変なことになっている可能性が高くて、スルガ銀行はそうした問題の一角とも言える。なぜそうなったのかというと、金利がゼロに近く、貸し出し金利も1%を下回るような状況で貸し出し競争が行われていた。企業融資はメガバンクでさえ大変で、地銀なんてどんどんお客をとられている。地銀はどうやって生き残っていくのか。もう企業融資はあきらめよう、金利が高くても借りてくれる個人を対象にしよう、不動産融資を無理にでも貸し付けて稼いでいこう、そうならざるをえない現在の金融政策の中で起きた事件です。
思い切った対応で反転攻勢すべき
── スルガ銀行はどう対処すべきとお考えですか? 河合氏 僕は、スルガ銀行は真実を見るのが怖くて、なかなか正しいリカバリーというか、解決の方法を見出していないと思います。彼らは、シェアハウスは場所も違うし入室率も違う、事情がそれぞれ違うから個別にリスケジューリングで話しましょうという方針です。それを対策として打ち出している。僕らは、そんな問題ではないでしょ、と言っているわけ。投資判断が誤っていただけの問題ならそれでいいけれど、そもそも3000万円、4000万円しか価値のない物件を1億円で売り付けておいて、1億円分の元利返せって、そんなのリスケジューリングでは無理ですよ。 ── どうすべきと? 河合氏 スルガ銀行が不動産を代物弁済で被害者から取得し、その不動産を売って債権を回収し、回収し切れなかった分は損金処理する、そういうふうにしないと解決しない。スルガ銀行にしてもそうした方が得です。これ以上、不良債権は出ませんと透明性をもって証明して、そこから頑張りますと言わないと反転攻勢できない。バブルの時に金融機関が再生した方法は目一杯償却する、これ以上、悪くなりません、ここから頑張ります、ということで反転攻勢できたわけです。スルガ銀行もそこまで思い切ってやらないと不良債権の火種をいつまでも抱えながらでは行員の士気も上がらないだろうし、被害者は一生債務奴隷になる。僕らは一生債務奴隷になるリスケには乗るなと言っています。 【河合弘之】かわい・ひろゆき。1944年4月生まれ。1968年東京大学法学部卒、1970年第二東京弁護士会登録。ダグラス・グラマン事件、平和相銀事件、つぼ八事件、国際航業事件のほかリッカ―や太平洋クラブなどの会社更生事件など戦後の企業・経済事件を数多く手がける。東日本大震災以降、原発訴訟に注力し浜岡原発差止訴訟弁護団団長、脱原発弁護団全国連絡会共同代表、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟幹事長などを務める。著書に「原発訴訟が社会を変える」など。また、原発問題をテーマにした映画を製作、自身の名刺には映画監督の肩書も。