ダビド・シルバに沸いた夜の三ツ沢。レジェンドマッチはサッカー人気再燃の一助となれるか
「来年はどうなるんでしょうか」
試合前後には選手たちからサインボールが投げ込まれたほか、試合中に流れ続ける音楽など、普段のサッカースタジアムではあまりない試みは新鮮でもあり、サッカー観戦というよりも、アイドルイベントに近い新しいスタイルの試合だったと言える。選手たちは、記者の目の前で子どもたちとの写真撮影やサインに応じるなど、気さくに対応するレジェンドたちとの交流は、横浜に集まったファン・サポーターにとって、特別な体験になったことだろう。 だからこそ、こういったサッカーを多角的に楽しめるイベントがさらに発展してほしい。 8,000人の観客は集まったが、15,442人を収容するスタジアムは満員にはならなかった。チケット料金を見ると、最低価格の6千円は集まったメンツの凄さを考えれば良心的ではあったが、メインスタンド側は1万円から2万5千円、最高価格のダイヤモンドVIP席は25万円と、なかなか手が出せる金額ではない。また本イベントの各種SNS、例えばXのフォロワーが2千人強にとどまっており、集客には課題が残ったとも言える。 「来年はどうなるんでしょうか」。開催に尽力した岩本氏は、試合終了後のインタビューで含みのある回答をしている。動画配信サービス『FOD』などによる生配信もなされたが、試合の開催自体が届くべき層に届いていなかったのかもしれない。 サッカー人気が下火になっていると嘆かれる昨今。世界を相手にしたレジェンドたちと往年のJリーガーによる戦いは、新たな可能性を感じさせた。ゲームやTVの中でしか見たことのない選手のプレーに接する高揚感はもちろん、シルバのような現役引退直後の選手を呼べるのならば、スポーツ観戦としての盛り上がりもさらに増大するだろう。「一生に一度観られるかどうか」ではなく、この大会がサッカー界を盛り上げる一助にもなってほしいとの期待を抱かせる一戦でもあった。(取材・文=浅野凜太郎)
浅野凜太郎