ウクライナからガザへ 戦時下で儲けるエネルギー商人 フーシ派の紅海での動きでエネルギー価格に影響も
新年から地震、航空機衝突と大きな災難に見舞われたが、ウクライナとガザではクリスマスも新年もなく戦争が続いている。 戦争は多くの人を不幸に追いやるが、間接的な影響まで考えるとエネルギー価格の上昇を通し、世界中の人に災いをもたらしている。ロシアのウクライナ侵略は、欧米によるロシア産原油・石油製品と石炭の禁輸を招き、欧州諸国は天然ガス購入量も削減した。結果は、石炭と天然ガス価格の高騰だった。 しかし、こんな時にも儲けのネタを探すエネルギー商人がいる。 ロシアのウクライナ侵略を受け、欧米諸国はロシア産化石燃料を対象に制裁措置を導入した。対ロシア制裁に加わっていない国は、欧米市場を失ったロシアから安く原油を購入し石油製品に加工した後、欧州諸国に販売するビジネスを作り出した。産油国の中にも、ロシア産原油を輸入し自国の消費に当て、自国産の原油を輸出する国が登場した。 ロシアへの制裁を行っている米国も欧州諸国も迂回され原産地が分からなくなった安価なロシア産の石油を購入している。制裁逃れは明らかだが、それだけ、エネルギー供給と価格は重要なのだろう。 しかし、ウクライナの戦争で一儲けしたエネルギー企業も、ガザの戦争により異なる戦略が必要になった。 ガザでの戦争は、パレスチナを支持するイエメンの反政府武装組織フーシ派による紅海を航行する船舶への攻撃を引き起こし、スエズ運河経由ではなく喜望峰経由での輸送を選択するエネルギー企業も現れた。 欧州向けに石油製品を輸出しているインド企業の一部は、紅海ルートを避ける必要が生じたため、欧州向け輸出を諦めアフリカ、アジアに販売先を変えた。インドから欧州向けの石油製品の1月の輸出量は、大きく落ち込んでいる。市況にも影響を与える。 停戦、終戦の見通しもない状況下、エネルギー供給への戦争の影響はこれからどうなるのだろうか。
戦争とエネルギーの歴史
戦争は、エネルギー供給にもしばしば影響を与えてきた。第一次世界大戦時に認識されたのは、航空機、軍用車両の燃料として利用された石油の重要性だった。産業、家庭では産業革命以来石炭が利用されていたが、軍事用に石油の確保が重要課題になり日本が太平洋戦争に踏み切る一因にもなった。 戦後1950年代まで、日本、西欧州諸国のエネルギー供給の中心は石炭だった。日本では傾斜生産政策により、欧州では欧州石炭鉄鋼共同体により、石炭と鉄の生産が国の重要政策課題になった。 50年代からの戦後復興と60年代の経済成長により急増した日本と西欧のエネルギー需要を支えたのは、中東から産出される価格競争力のある石油だった。 73年の第4次中東戦争が引き金となった石油危機により、石油に依存していた主要国は供給、価格面でエネルギー分散の必要性に直面し、原子力、天然ガス、石炭に供給を分散した。 その結果、石油からのエネルギー源の分散が進み石油への依存度が下がった。とはいえ、現在日本をはじめとしたエネルギー多消費国は一次エネルギー供給の8割前後を化石燃料に依存している。欧州諸国は、天然ガス需要量の半分弱、石油、石炭需要量の約4分の1を世界最大の化石燃料輸出国ロシアに依存していた。 欧米日はロシアに戦費を渡さないためロシア産化石燃料の輸入量の削減に乗り出した。ロシア依存度が高い欧州連合(EU)は、脱炭素もあり脱ロシア産化石燃料を急いでいる。