「会社説明会はいつも満席」の悲鳴、学歴フィルターが企業にとってちっとも合理的でないワケ
かつては新卒採用において「学歴不問」がブームになったこともあるが、近年は、就活生から人気の企業ほど学歴フィルターを使って効率的に採用を進めている。しかし「学歴フィルター」の多用は、深刻な社会課題を招くリスクがあるという。行動経済学の視点を活かし、マーケティング&ブランディングディレクターとして活躍する橋本之克氏が「学歴フィルター」が孕む問題点について解説する。※本稿は、橋本之克氏『世界最先端の研究が教える新事実 行動経済学BEST100』(総合法令出版)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 会社説明会の空席があるはずなのに 一部の学生には「満席」と表示される? 就活生の間では「学歴フィルター」という言葉は有名です。就職コンサルタントの福島直樹氏の著作『学歴フィルター』も話題となり、一般の人たちの間でも徐々に知られるようになりました。 学歴フィルターとは新卒採用において、企業側が大学名などでフィルターをかけ、偏差値の高い大学生を優遇し、偏差値の低い(低選抜大学の)大学生をふるい落とす仕組みです。おおっぴらには言わなくとも、実は多くの企業が学歴フィルターを利用しているようです。人気企業ほど多用していると言われます。 これによって、選ばれない学生にとっては非常に困ったことが起きます。 例えば、会社説明会の申込みで「一流大学の学生が参加できるタイミングで、低選抜大学の学生が申し込むと、サイトで『満席』と表示される」といった現象です。一部の企業などではこれが発覚し、ネットで炎上しています。 一般の人の多くは、学歴偏重を古い慣習と考えているでしょうから、学歴フィルターの存在は意外かもしれません。少し歴史をさかのぼった1990年代前半には、学歴不問(学校名不問)の新卒採用がブームにもなりました。このような採用をすることが企業の先進的なイメージ作りにもつながるという考えのもと、多くの企業が取り入れたのです。