「会社説明会はいつも満席」の悲鳴、学歴フィルターが企業にとってちっとも合理的でないワケ
● 復活した「学歴フィルター」 その存在は就活では暗黙の常識 ただしこの風潮も、バブルの崩壊とともに下火になりました。逆に2000年代に入ると多くの企業が「大学名を問う」方向に戻り始めました。2010年頃には、既に「学歴フィルター」「ターゲット大学」という言葉が就活生の間で話題になっています。2011年時点の就活生向けサイトが募集する「就活川柳」には、次のような就活生の作品があったと福島氏は言います。 『参加したい説明会があったけど常に満席学歴フィルター』 この当時、既に就活生の間では学歴フィルターの存在が知られていたのでしょう。その後、現在に至るまで学歴フィルターは、ひっそりと採用の世界における常識として存在し続けています。多様な人材を確保するために「学歴不問・人物重視」を謳う企業もありますが、必ずしも実態に即していないようです。 この「学歴フィルター」を使うことの、良し悪しを評価するのは簡単ではありません。なぜなら、関わる人や主体によって利害が相反するからです。 ● 企業は高レベルな人材を 低い採用コストで選抜したい 例えば「企業の論理」では、学歴フィルターにも一定の合理性があります。
確かに低選抜大学出身でも、意欲的で才能がある学生はいるでしょう。しかし、そういった人材は必ずしも多くはありませんし、発掘するには今まで以上に大勢の学生に接する必要があり、これまで踏襲してきた採用プロセスやスケジュールも変更しなければならないかもしれません。 これには時間と手間がかかりますし、採用担当社員の人件費もかかります。結果的に、これは企業にとって非効率なのです。 一方「社会の論理」で考えると、学歴フィルターは大きな問題です。なぜなら、これは偏差値の高い大学の学生が有利になる、不公平な仕組みだからです。 しばしば指摘されることですが、一部の国立大学や海外大学など「超・上位大学」の入試を突破するには多額の教育資金が必要になります。それを用意できる経済力を持つ家庭の子供が超・上位大学に入学し、卒業して優良企業に就職し、高収入をもらい続けるわけです。このサイクルが続けば、社会の格差が生まれ固定化します。 学歴フィルターの被害を直接受けるのは、低選抜大学の学生です。なぜなら採用されないにもかかわらず、無駄な時間と労力を費やすことになるからです。その分だけ、公正な採用を行う企業の採用に向けた準備ができなくなります。彼らの中には、学歴フィルターを使っているならば、そのことを公言してくれたほうがありがたいという声さえあります。