安倍首相「解釈改憲」発言で注目 立憲主義とは? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
司法府は行政府を止められるのか
もっとも両陣営からも「私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」という首相発言にはいかがなものかと疑問が寄せられています。この言いようだと選挙にさえ勝てば首相がいくらでも解釈を変えられるととらえられかねないと発言支持側からも不安視されているところです。 この問題はいくつもの重層的な不安や考え方が絡み合っています。列挙すると (1)純粋に「立憲主義」の立場が脅かされるか否か (2)集団的自衛権が9条で許されるのか否かという法律論 (3)ずっと続いてきた護憲派と改憲派の形を変えた意見の争い (4)「解釈改憲」で9条を骨抜きにする派と、そうはならない派と「憲法改正が正論だ」派の三者巴戦 そしてあまり話題にならない、しかし一番の問題のはずなのは「最後の判定者」たる最高裁判所が機能するかどうかです。過去において最高裁が違憲判決を下したケースはまれで、9条に関する訴訟でも判断を何度か避けてきました。この判断も法律論として賛否両論あるのですが、仮に行政府の暴走を司法府が止められないとなると、それはそれで立憲主義の危機ともいえます。 --------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】