なぜパリ五輪で卓球男子はメダル“ゼロ”?「水谷隼がいた頃の選手層がない。自費で国際大会に参加している現状」団体3位決定戦に敗れ“惨敗”に終わった理由を元オリンピアンが解説
男女で明暗が分かれた要因として、松下氏は選手層の厚さの差をあげる。 「女子は最新の世界ランキングで9位に入っている伊藤美誠選手が、代表に選ばれないほど選手層が厚い。団体のリザーブを務める木原美悠選手が26位で続き、さらに長﨑美柚選手、森さくら選手、大藤沙月選手、橋本帆乃香選手、佐藤瞳選手が100位以内にランクインしている。ミキハウス所属の日本人選手たちがパリ五輪前に、準決勝で日本に1-3で敗れたドイツに招かれ、観客を入れて仮想日本といった形の前哨戦を実施したところ、5-0で勝っている。世界ランキングで3位までを占める選手が女子代表に選ばれ、4位の選手が選ばれなかった中国の状況に近づいているといっていい」 まだ21歳の張本に必要以上の負担がかかるいま現在の男子の選手層を、水谷氏が現役だったころのように再び活性化させるには何が必要なのか。松下氏は「もっともっと国際競争力を高めていかないと難しい」と次のように指摘する。 「日本国内の大会よりも国際大会で勝ち上がっていけるように、選手たちを競争させながら成長させる仕組みを、ナショナルチームの選手選考方法も含めて考えていく必要性が出てきたと思う。東京五輪までは国の予算も多くついて、国際大会に参加できる選手の数も非常に多かった。対照的にいまは予算が減った関係で、自費で国際大会に参加している選手が多くなった。卓球にかかわるみなさんが、一生懸命なのはもちろん理解している。それでもパリ五輪でメダルを取れなかった以上は、その理由も含めて、これまでの3年間で何がよくて、何がいけなかったのかを冷静に考える必要がある」 東京五輪の新種目、混合ダブルスでも決勝で中国ペアを破って金メダルを獲得している水谷氏は、テレビ東京のパリ五輪卓球中継のキャスターと、卓球界のOBの両方から感じた思いを、9日に更新した自身のX(旧ツイッター)に投稿している。 <キャスターとしてはよくやった、頑張ったと励ましたいし、金メダリストとしてはあんなプレーと気持ちじゃオリンピックのメダルは遠いと喝入れたいし複雑な気持ちだ> 2028年のロサンゼルス五輪へ向けて、今後も男子卓球陣をけん引していく立場となる張本は、自身にとって2度目の五輪をあらためて総括している。 「正直(団体の)準決勝が終わった時点では最悪の大会だなと思っていました。今日も勝てなかったけど、すごくいい大会だったと思っている。もちろんメダルという形にはならなかったけど、このチームをすごく誇りに思っています」 最後まで下を向かなかった姿は、水谷氏の愛が込められた叱咤激励を糧に変えて、必ずはいあがってみせるという決意の表れとなる。選手個々の頑張りだけでなく、卓球界全体の総力も問われる4年間は、すでに幕を開けている。