「106万円の壁」を超えても手取りが減らない方法があるってホント?10月からの「社会保険適用拡大」でパート主婦の手取りの変化を解説
「106万円の壁」を超えると手取りはどう変わる?
「106万円の壁」を超えて働き、社会保険に加入すると手取りがどう変わるのかをみていきましょう。 年収が同じ110万円のAさん(社会保険加入)とBさん(扶養のまま)で比較してみます。 ※Aさん、Bさんともに、勤務地は東京都で40歳以上とします。 *Aさん(社会保険加入) ・健康保険料+介護保険料・・・5095円(年額6万1140円) ・厚生年金保険料・・・8052円(年額9万6624円) ・所得税・・・0円 ・住民税・・・5000円 ・負担合計・・・16万2764円 *Bさん(扶養のまま) ・健康保険料+介護保険料・・・0円 ・厚生年金保険料・・・0円 ・所得税・・・3150円 ・住民税・・・1万3700円 ・負担合計・・・1万6850円 同じ年収110万円でも、社会保険に加入したことで、加入しなかった場合よりも年間14万5914円負担が増えました。 これに対し、厚生年金の報酬比例部分が上乗せされるので、1年間の加入で年金が5788円増えます。増えた負担に対して、25年でもとが取れる計算になります。65歳から年金をもらい始めた場合、90歳以上長生きしないと、もとが取れないことになります。 ただし、社会保険に加入するメリットは、年金が増えるだけではありません。障害年金・遺族年金の充実、傷病手当金・出産手当金が受け取れるなどのメリットもあります。そのため、払った保険料と増える年金という図式だけで比較するのは間違いです。とはいえ、扶養内でいる場合と比べて、手取りが大きく減ってしまうのは、壁を意識せざるを得ない状況といえます。
「年収の壁・支援強化パッケージ」とは
2023年10月から始まった「年収の壁・支援強化パッケージ」とは、「年収の壁」問題に対応するために、労働者を雇用する事業主に、キャリアアップ助成金を支給する制度です。 年収106万円を超えて働くなどして、新たに社会保険適用となった労働者の収入を増加する取組を行った事業主に助成されます。 助成金は事業主に直接支給され、労働者は事業主から手当が支給されます。これによって、労働者は手取りを減らすことなく、社会保険加入の恩恵を受けることができます。 この制度は、労働者個人に対する助成ではないため、利用したい場合は、まずは、勤め先の企業が、「年収の壁」に関する対応を検討しているか確認してみましょう。 検討していないようであれば、労働者側から働きかけてみましょう。人手不足に悩む企業にとっては、有効な対策なので、取り組んでくれる可能性は大いにあります。ただし、2025年度末までの措置であるため、一時的な対策であることを認識しておき、その後は手取りの減少が気にならない程度まで収入を増やせると理想的です。 働き方は人それぞれなので、扶養内で働く選択も尊重されるべきですが、扶養でいる理由が「年収の壁」であるならば、この機会に働き方を考えてみるといいかもしれません。壁を意識せずに働くことで、収入が大きく増える、それよって年金額も増える、仕事にやりがいが生まれる可能性が高くなるでしょう。
参考資料
・厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト」 ・日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」 ・全国健康保険協会「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)|東京都 | 協会けんぽ」 ・政府広報オンライン「「年収の壁」対策がスタート! パートやアルバイトはどうなる? 」
石倉 博子