第9回福祉新聞フォーラム「福祉法人決算のあり方・読み方」の内容を紹介
3日に開催した福祉新聞社主催の「第9回福祉新聞フォーラム」は、公認会計士渡部博事務所長ら3人が登壇。社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム(福祉医療機構)からデータを読み取り、法人の事業計画作りに役立てる方法や「電子帳簿保存法と会計業務の電子化への対応」、消費税に関連した「インボイス制度への対応」について講義した。その内容を紹介。 付加価値を高める計画を 公認会計士渡部博事務所 所長 渡部 博 氏 社会福祉法人の「財務諸表等電子開示システム」のデータを時系列で読むと、全国の社会福祉法人の平均的な収支構造の変化、その変化の要因を把握することができます。 2019年度から23年度にかけて赤字法人の数は7427法人から8566法人に増えました。サービス活動増減差額率も減少しており、赤字予備軍が増えていることが分かります。 赤字法人の数が増え、利益率が減少しているにもかかわらず、職員1人当たりのサービス収益は18年度の635万7000円から23年度の681万9000円と増加し、自己収益比率が減少しています。 このことから、福祉サービスの提供数、稼働率の増加による収益の増加ではなく、補助金の増加による収益の増加であることが分かります。 補助金による収益の増加は利益率と付加価値率の減少となって現れます。付加価値とは法人が生み出す価値のことで、主に人件費と利益の合計です。 この付加価値をサービス活動収益(売り上げ)で割ったのが「付加価値率」で、その平均値はこの5年間で減少しています。 データで判断する限り、補助金による収益の増加は利益や付加価値の増加にはつながりません。付加価値を高めるにはサービスの稼働率を上げること、サービスの対価としての収入を増やすことが欠かせません。 法人が事業計画を作る際は、この「付加価値率」を意識して事業対価の成長性や職員1人当たりの各種指標(人件費、事務費など)を分析し、将来のあるべき姿を描くことになります。 あるべき姿と現在の姿のギャップがその法人の経営課題です。継続的に付加価値を増やすには事業領域を見直すことが不可欠です。 この電子開示システムから、他法人の優れた経営手法をその公開データから学ぶこともできます。法人経営に役立ててください。