第9回福祉新聞フォーラム「福祉法人決算のあり方・読み方」の内容を紹介
インボイスの対応方法
公認会計士渡部博事務所 税理士 鳥原 弓里江 氏 社会福祉法人のインボイス制度への対応方法、デジタルインボイスの仕組みについてお話しします。 適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)とは、仕入税額控除の要件として、原則、適格請求書の保存が必要になる方式のことです。 インボイスとは、売り手が買い手に正確な消費税額を伝える手段のことで、売り手は買い手の求めに応じてインボイスの発行義務があります。 売り手としての立場からのインボイス制度への対応としては、まず、適格請求書発行事業者に登録するかどうかの検討を行います。 適格請求書発行事業者としての登録は、必要性、義務、事務負担の観点から総合的に判断します。特に、サービス提供先から適格請求書の要求がある場合、重要な判断基準になるでしょう。 社会福祉事業の大半は非課税ですが、消費税を課される課税取引もあります。免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を行った場合、登録された日から課税事業者となり、消費税の申告が義務化されます。 買い手としての立場からのインボイス制度への対応は、消費税の申告を本則課税で行っている事業者に限り、対応が必要になります。適格請求書を保存する必要のある取引の保存方法を確認し、検討を進めてください。 次に、デジタルインボイスとは、バックオフィス業務全体をデジタル化する仕組みのことで、日本では欧州で普及している「ペポル」を基礎に、普及・定着への取り組みが始まったばかりです。 デジタルインボイスの普及・定着により、売り手がペポルを通じて提供した請求情報を買い手が受領すると、買い手側の会計システムに自動で仕訳が計上され、さらに、銀行データと結びついて自動で送金処理を行うことも可能になります。 売り手側では、請求情報を作成した時点で、会計システムに自動で未収金が計上され、買い手側から入金があったときに自動で未収金の消込処理がされます。 現状ではデジタルインボイスが義務化される見通しは立っていませんが、将来的に公共事業での導入可能性は否定できません。