【毎日書評】どこからが「ハラスメント」?中小企業こそ求められる教訓と対策
ハラスメントとは
一般的に、受け取る側の主観的判断として、なんらかの苦痛を感じた場合に「〇〇ハラスメント」などといわれることが多くあるもの。 なかでもすぐに思い浮かぶのは、「セクシュアルハラスメント」と「パワーハラスメント」ではないでしょうか。 この2つについて、著者は次のように説明しています。 セクシュアルハラスメントは、①職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの労働条件について不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)と、②性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものになったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること(環境型セクシュアルハラスメント)をいうものとされています(男女雇用機会均等法第11条第1項)。(233~234ページより) パワーハラスメントは、①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③その雇用する労働者の就業環境が害されることをいうものとされています(労働施策総合推進法第30条の2第1項)。(234ページより) また、法律上の損害賠償責任を負うようなハラスメントとは、不適切というレベルを超え、違法との評価を受ける場合に限られているそう。 したがって、従業員から「××さんの△△行為は、〇〇ハラスメントである」などと相談を受けた場合でも、「それが法律上のハラスメントに該当するようなものであるか否か」という点を踏まえ、場合によっては専門家に相談したうえで対処する必要があるそうです。(233ページより)
教訓と対策:事前の対応
ハラスメントは、職場における労働生産性にも大きくかかわってくるところであり、会社の経営者側からしても、発生を防止しておく合理的な理由があります。 特に、人材の確保が難しく、少人数でのチームワークを発揮して利益を上げていくこととなる中小企業においては、ハラスメントの発生を防止することが大変重要な課題となります。(236ページより) 上述のように、「ある行為が法的にも違法なハラスメントか否か」の判断はきわめて難しいところではあります。しかし会社側としては、「違法とはいえないハラスメントさえも許さない」という確固たる姿勢を示すことが重要。 そこで大切なのは、日ごろから従業員への研修を行い、従業員および社外へ向けた通知によって会社としての方針を明確にしておくこと。そうすれば、トラブルを事前に防ぐことが可能となるわけです。 また、社内や社外に相談窓口を設置しておけば、裁判とならずに解決が可能となる場合があるようです。著者は近年、社外の通報窓口を弁護士事務所に依頼したいという相談が増えているように感じているのだとか。 なお、その際、すでに顧問弁護士となっている者は、将来的に会社の代理人を務める可能性があるために利益相反の可能性があることから、顧問弁護士とは異なる弁護士を従業員の窓口としておくことが有益と考えられます。(236~237ページより) 当然のことではありますが、あくまでもフラットな視点に立つ必要があるということです。(236ページより)