「世界一美しいクーペ」が約435万円で落札! 今後高騰が見込めるBMW「635CSi」を購入するなら今がチャンスかも
ドイツ製ヤングタイマーの雄として、マーケットでも急速成長中?
アイコニック・オークショネアーズ社は、2011年に「シルヴァーストーン・オークション」として創業。2023年8月に現在の屋号に改組して再スタートを図ったという、自動車オークションビジネス界では比較的新興勢力ともいうべきオークション会社である。 そして2024年5月18日、同社が英国ノーザンハンプトン州シウェルのローカル飛行場を会場とするオークションに出品したのは、フェイスリフト後の635CSiA。もとより英国に新車として輸出された、オリジナルの右ハンドル/オートマティック仕様車である。 英国での初登録は1982年7月1日で、歴代所有者については明かされていないものの、現オーナーとの付き合いは7年に及ぶという。オークション公式ウェブカタログ作成時の表示走行距離はわずか2万6818kmで、これは2017年に現オーナーが購入して以来、メンテナンスに際して発行された請求書を含む、膨大な履歴ドキュメントによって裏付けられている。 1980年代を迎えると、初代6シリーズではエクステリアおよびインテリアのスタイリングが少しだけ変更され、シャシー&サスペンション、エレクトロニクスなどもE28系5シリーズのものへとアップデートされていたのだが、このオークション出品車両もその時代のもの。BMWが誇る215psのM30型「シルキーシックス」に、E28から初導入された4速オートマティックを組み合わせている。 また「ポラリス・シルバー」のボディや、ブルーのクロスインテリアは、走行距離の少なさを暗示するような、素晴らしいコンディションを維持している。 かつての中古車市場においては、インテリアは本革レザーが好まれたのだが、近年のクラシックカー市場では時代を感じさせるファブリック生地も、コンディションさえ良ければ本革に勝るとも劣らない評価を受けるようになっているようだ。 今回のオークション出品に際して添付されたドキュメントファイルには、この「1982年フェイスリフトモデルは真に例外的な1台であり、このようなクルマをいかなる価格でも見つけることは極めて困難」とする、英国を代表するBMWスペシャリスト「ミュンヘン・レジェンド」社から、2007年9月12日に送付されたレポートも含まれている。 現在の車検は2025年2月まで有効で、「ノー・アドバイザリー(警告すべき事項なし)」と記載されているという。また、BMWの特徴であるトランクリッド裏のツールケースの純正工具が完備されるなど、装備やオプションの面でも申し分のない1台だった。 そしてアイコニック・オークショネアーズ社はこのBMW 635CSiについて、2万5000ポンド~3万5000ポンドという、かなり強気にも見えるエスティメート(推定落札価格)を設定した。 ところが実際の競売では、エスティメートの下限を大きく割り込む2万1375ポンド、日本円に換算すれば約435万円という、落札者にとってはラッキー、売り手側にとってはかなり不本意なプライスで競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。 ところで蛇足ながら、E24系6シリーズをして「世界一美しいクーペ」とする見方はどうやら日本発祥のもののようで、実際に英語の「The Most Beautiful Coupe in the World」で検索してみても、6シリーズにはなかなかたどり着けない。 ただ、それでもこのモデルが素晴らしく美しく、そして魅力的であることは間違いなく、ヤングタイマー・クラシック人気と相場の高まりにしたがって、今後は価格高騰の可能性が非常に高いクルマのひとつと思われるのである。
武田公実