切なくも前向き「パスト ライブス/再会」:総まくり2024年
2024年もたくさんの映画が、私たち映画ファンを楽しませてくれました。ひとシネマのライター陣が、映画、動画配信サービスの作品から今年の10本、そして2025年への期待を語ります。 【写真】〝思いやり〟にあたたかな気持ちが満ちてくる 「夜明けのすべて」の一場面
山田あゆみさんが選んだ今年の10本
「コット、はじまりの夏」(コルム・バレード監督) 「Here」(バス・ドゥボス監督) 「夜明けのすべて」(三宅唱監督) 「ロボット・ドリームズ」(パブロ・ベルヘル監督) 「ナミビアの砂漠」(山中瑶子監督) 「パスト ライブス/再会」(セリーヌ・ソン監督) 「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」(アレクサンダー・ペイン監督) 「3000万」(NHKドラマシリーズ) 「リプリー」(Netflixドラマシリーズ) 「サムバディ・サムウェア」シーズン3(U-NEXT配信)
生きづらさと共に生きる知恵「夜明けのすべて」
2024年の映画を振り返ったとき、とくに印象的だったのは2作品。1作目は「パスト ライブス/再会」だ。韓国からニューヨークへ移住した主人公ノラが、12歳のころ恋心を抱いた幼なじみに、24歳、36歳と、時を経て再会する。〝昔と今のわたし〟を見つめながら、〝これからのわたし〟と出会う物語だ。胸が締めつけられる場面が多いが、気まずさの中にぬくもりがある、不思議な感覚になった。切なくも前向きな鑑賞後の余韻が忘れられない作品である。 2作目は「夜明けのすべて」だ。人生における喪失や不遇、さまざまな生きづらさをアクシデントとしてではなく、それと共に生きる前提で描いた点に胸を打たれた。作中度々登場するおすそ分けに、人と人がつながりあって生きる上で最も大切な〝思いやり〟を再認識させられ、あたたかな気持ちに満たされた作品だった。
サンドシアター代表 山田あゆみ