入社困難の人気企業Duolingo、日本トップが振り返った「採用面接ループ」
「正しい人は正しいことをする」
続いて水谷は「どうやってこんなにすごいカルチャーの組織をつくったのか」尋ねた。 「従業員が一緒に働きたいと思う『Niceな人』しか採用しないようにしている。それは、『Not Nice』な人を採ると周りに影響があるからだ。採用には十分な時間と労力をかける。平均して、一人採用するのに1000枚のレジュメ見ている。 日本がいい例で、2019年7月から1年間カントリーマネージャーを探していた。良い人はいたが、『Right Person』はいなかった。君は初めて全員が『Love him』といった人。とくにキャリーは全員にNoと言っていたが、今回初めてYesと言った。キャリーに感謝するといい」 1年間決まらなかったと聞いた水谷は、「スタートアップの感覚からすると、1年もカントリーマネジャーのポジションを空けるのは信じられない。どうしてそういう意思決定ができたのか?」と聞いた。 「もちろん諸刃の剣でもある。とくにスピードは落ちるし、採用が決まらない間、日本の成長の機会を失ったことになる。でも我々は、スピードやグロースより『Right Person』にこだわる。ロングタームでみれば、その方が早いからだ。正しい人は正しいことをするからスピードも上がるし、再び採用する必要もなくなる。逆に正しくない人を採用すると、ネガティブな影響が出てしまい、それを修復するのに時間がかかる。正しくない人を採用してしまったときの影響は計り知れない」 最後に水谷は会社をつくるのに最も大切なことは何か尋ねた。 「目的による。お金を得るためにBuy Outさせる目的で会社をつくるのと、会社を長く続かせる目的でつくるのとでは変わってくる。Duolingoは『Long last over decades(数十年にわたる長期的な目的の下で)』運営している。この場合、起業家にとってもっとも大切なのは、何事も長期的に考えて行動することだ。多くの起業家は明日や来週のことにフォーカスしてしまうが、大事なのは『いまここで行うものが、3年後、5年後にどういう影響を与えるか?』と考えることだ」 意外だった、「なぜ『キャリーが』連絡をしてきたのか?」 の答え 水谷は振り返る。 「ルイスとの会話はとにかく刺激的で楽しくて。熱く語るルイスの姿を見て、どんどん会話のラリーにのめりこんでいきました。合格云々より、彼が言っていることを覚えようとしたりメモをとったり必死でした」 水谷はHRから、面談が終わってすぐにルイスから「I LOVE SHO」のフィードバックがあり採用されたことを聞かされた。 採用決定までの長いプロセスの冒頭で水谷が抱いた「なぜ、ビジネス部門のキャリーが直接連絡をよこしたのか」という疑問の答えは、働きだして1年後、退職するキャリーの送別会の後、当時採用プロセスに関わっていた中国のマネージャーによって明かされた。 当時、全員が「YES」と言ったあるカントリーマネジャー候補者がいたそうだが、キャリーだけが「NO」と言ったのだという。日本の市場を知っている唯一の人材でもあったキャリーの判断が尊重された結果、彼は採用に至らなかった。「そこで責任を感じたのだろう、キャリーが自ら候補者を探しはじめたんだ」。 水谷は言う。「長期間の採用プロセスでようやくほぼ全員が『YES』と言うなか、自分がどうしても違うと思った候補者にきっぱり『NO』を出したキャリーは、とても勇敢だと思いました」。 水谷は一緒に仕事を始めたのちも、心から彼女を尊敬している。 (※なお内定までの物語は、水谷氏自身による「note」にも詳しい。 )
Forbes JAPAN 編集部