入社困難の人気企業Duolingo、日本トップが振り返った「採用面接ループ」
CMOがオンサイトインタビューの準備に「入れ知恵」
オンサイトインタビューの前に、CMOから、「日本でDuolingoを成功させるためのアイデアをまとめてプレゼンせよ」という課題が下り、準備についてのアドバイスをくれた。 プレゼンのアイデアを考えながら改めて志望動機を確認するうち、これまで米国人と仕事をするなかで、日本人について感じていたことが明確になったという。 すなわち、日本人は優秀さでは世界にも負けないが、それを伝えるツール(英語)を持っていないことが弱点だ。だからこそ、英語が話せる人の裾野を広げれば、そのまま日本の国益になるのではないか。日本から世界で活躍する人を増やす...そんな大義を、Duolingoを通してなら叶えられるのではないか、と考えるようになったのだ。 そうこうするうちに迎えたオンサイトインタビューの面接官は7人。インタビューは、プレゼンテーションを入れて3日間にもわたった。ちなみに、インタビュアーのいる国と日本との時差のため、すべて「日本時間で早朝6時スタート」だった。 事前に水谷は、各面接官の「役職」から、質問をシミュレーションした。そして全ての回答に具体的なエピソードを交えて話せるように、状況・課題・解決のための行動・その結果についてノートにまとめ、実際に声に出してリハーサルした。 オンサイトインタビューは、全員の前で日本市場の仮戦略のプレゼンテーションをすることから始まった。そしてプレゼンテーションが終わり、いくつか質問に答えた後、そのまま「ループインタビュー(複数の面接官によるインタビューが次々と行われる)」へ。 ◾️「バッド・コップ」不在のループインタビュー、そしてついにCEO、ルイスと―― とくに聞かれたのは、これまでのキャリアで、他部署や他社のメンバーとどのようにコミュニケーションを取り、協業してきたか、意見が対立した時、どのように乗り越えたのか、ということだった。 「一般的なループインタビューにはいわゆるバッド・コップとグッド・コップがいますが、面接官は全員がナイスな人たちで、他者をリスペクトするカルチャーがある組織なのだなと感じました。いま思えば、そういうカルチャーにフィットするような、相手をリスペクトしながら自分の意見を通すために最適な方法を見つけて、共通目的に向かって走っていく行動がとれる人物なのかどうかを、見られていたのかなと思います」 オンサイトインタビューを通過した水谷がCEOのルイスとの最終面談を迎えたのは5月中旬だった。面談は、水谷がルイスに聞きたいことを質問する時間だと伝えられた。そこで、ルイスのことを記述したものはほぼ全てに目を通すなど、入念に準備した。 ルイスには、「あなたに関する記事は全部見ました。だからどのような背景でDuolingoがつくられたのか知っています。それでもやっぱりあなたの口から直接聞きたい。なぜDuolingoをつくったのですか?」と、ひとつひとつの言葉に細心の注意を払いながら尋ねた。ルイスは次のように答えた。 「reCAPTCHA(コンピューター上の操作が人の手によるものであることを認証するシステム)をGoogleに売却してから、次はEducationにフォーカスしようと決めていた。 僕は貧しい国(Guatemala)で育った。みんな貧困から抜け出すために英語を学びたがったが、英語を学ぶのには高いお金が必要で、フェアじゃないと思った。完全無料で外国語を学べる方法はないかと思い、Duolingoを立ち上げた。 ※「ビル・ゲイツもシリア難民も使う」語学アプリDuolingo、CEOが語る誕生秘話 の中でも彼は、「平等な教育へのアクセス手段としては、『無料の教育』を提供する方法をローンチすることが一番と考え、Duolingoを創業した」と述べている。