“捨て試合”はありか?なしか? ヤクルトの山田、青木、バレ主力途中交代の是非
古い話で恐縮だが、長嶋茂雄氏は、どんな試合でもファンのために最後まで打席に立ち、全身全霊のプレーを見せることにこだわり三振した姿さえも絵にして見せた。たとえ完敗であっても最後まで全力を尽くす姿を見せるーーというプロの美学である。 ヤクルトにフルイニング出場記録に挑戦している選手がいなかったことも手伝ったのかもしれないが、遠方から来た人やなんらかの事情があって、この試合しか来れないというファンもいたのかもしれない。阪神の暗黒時代には「敗れても最後に代打・川藤幸三氏の打席が見れたら満足して帰ることができる」と言ったファンもいた。 この試合のチケットを買ったファンの顧客満足度という点で言えば、主力には、せめてもう1打席立たせるべきで、間違った采配だったのかもしれない。 だが、一方でフィールド内のマネジメントだけに目を向け、中長期的な視点で見れば、逆転の可能性が薄い負けゲームで主力を休養させ、次に備えるという采配は間違っていない。西武で黄金期を作った名将、森祗晶氏は「負けゲームをいかに生かすか」を優勝に導くための必須条件としていた。 「試合に出る出ないで疲労度はまったく違う」という声もある。 某セ・リーグのOBも、「阪神巨人といった人気球団では難しいことかもしれないが、優勝するためには捨てゲームの作り方は重要な戦略。143試合のトータルで考えてベテランのコンディションを維持するために、こういう形で休養を取らせるのは、負けゲームを次に生かす戦術としてあり得ること。一方で、小川監督は、逆に若い選手が、こういう大味なゲームの中でゲームセットまで集中しているかどうかをしっかりと見ていた。若い監督には、まだその域に届かないような野球を小川監督は知っている」と評価していた。 エネルギーを貯めた3人がさっそく中日戦で爆発する可能性もある。 ファンの意見の中には、「理屈としては納得しても感情はまた別物」「長期的戦略とその日の興行は相反するところがあるから難しい」「良い采配だと思うが現地に行った試合でこうなると残念な気持ちになる」というものも目立った。この采配に対する賛否の落としどころは、そういうところなのだろう。正解は、ペナントレースが終わるまでわからないのかもしれない。