知ってる? 大きな被害をもたらす「線状降水帯」の正体とは
線状降水帯をつくる「バックビルディング」
風上で次々と新しい積乱雲が発生し、発達しながら移動することをバックビルディングと呼びます。バケツをひっくり返したような激しい雨が数時間続くこともあり、土砂災害や洪水の被害に注意が必要です。
バックビルディングのしくみ
(1)地上の近くに暖かく湿った風が吹き、その空気が何らかの理由で持ち上げられることで、積乱雲が発生・発達する。 (2)この積乱雲が発達して激しい雨を降らせることで生まれる下降気流と、風上からの暖かく湿った下層風がぶつかることで、また上昇気流が発生し、新たな積乱雲ができる。 (3)(2)を繰り返すと、同じ場所で積乱雲が発生して風下側に移動。1つの積乱雲は1時間程度で消えていくが、次々と新しい積乱雲が発生して移動してくることで、同じところで長時間の大雨が降る。 線状降水帯の存在は、2014年に広島県で起きた豪雨災害で注目されるようになりました。 近年、九州地方などで集中豪雨や大雨の被害が多く発生していることから、気象庁では2021年から線状降水帯についての情報を発表するようになりました。 2021年は線状降水帯が発生したことを伝える情報を、2022年には線状降水帯による大雨の可能性を予測する情報をそれぞれ提供開始し、今後もスーパーコンピュータ「富岳」を利用するなどにより、さらに精度を高めていく計画です。 隈健一(くまけんいち) 東京大学先端科学技術研究センター シニアプログラムアドバイザー。気象庁で数値予報開発に携わり台圏予報の精度向上に貫献。東京管区気象台長、観測部長を経て2019年3月に気象研究所長にて定年退職。東京大学先端科学技術研究センターにおいて、JSTのCOi-NEXT(共創の場形成支援プログラム)のClimCORE(地域気象データと先端学術による戦略的社会共創拠点)の立ち上げに関わり現在このプロジェクトの推進中。 イラスト:イケウチリリー 協力:新星出版社 Fun-Life! Book Bang編集部 新潮社
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