満島ひかりの“主演俳優”としての器量 二面性を両立させる『ラストマイル』に圧倒される
満島ひかりが体現する、『ラストマイル』エレナの“ミステリアスな二面性”
しかし、幕が上がれば観客の誰もが俳優・満島ひかりの力に圧倒されることだろう。 エレナは並々ならぬバイタリティーで仕事に臨む人物だ。非常にロジカルな思考回路を持ち、その弁舌には凄まじいものがある。それでいて、いまいち彼女の心の内が読めない(これは物語の後半で分かるのだが、ここでの言及は控えておこう)。情熱的な人間でありながら本心が掴めないだなんて、果たして両立するのだろうか。ミステリアスにもほどがある。だが満島は、これを華麗に成立させてみせているのである。 このエレナのようなキャラクターが中心に立っているからこそ、私たちは連続爆破事件に対してだけでなく、『ラストマイル』という作品そのものに対して、絶えず翻弄されることになる。これは演じ手が脚本に記されているとおりにキャラクターを表現すれば、ある程度は成立するのだろう。しかしその深度や強度というものは、エレナを演じる俳優の力にかかっていると思う。これはつまり、『アンナチュラル』と『MIU404』という人気作をも巻き込んだシェアード・ユニバース作品である『ラストマイル』の深度や強度を、主演俳優である満島ひかりが決定づけているともいえるのではないだろうか。 見たことがあるようで、見たことがない。そんな満島のエネルギッシュな姿が銀幕に現れることで生じるアツさには、私たちの想像を超えるものがあるのである。夏はまだまだ終わりそうにない。
折田侑駿