「高い品質、ブランド力、優れた販売力」だけでは生き残れない…"名門企業ワコール"業績低迷3つの理由
■シンガポールの「物言う株主」が筆頭株主に こうしたなか、ワコールはさらなる「試練」に直面している。アクティビスト(物言う株主)として名高いシンガポールの投資会社3Dインベストメント・パートナーズが、今年に入ってワコールHD株を買い進め、2024年11月時点で、10.77%を取得し、筆頭株主となっているのだ。 3Dインベストメントは、「純投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為を行う」ことを保有目的としており、株主還元を含めた企業価値向上策や不採算部門の売却などで、ワコール経営陣に圧力をかけてくるとみられている。 ここまでにみてきたように、今年に入ってからの3度目の希望退職募集や、保有不動産や株式の売却の加速などは、3Dインベストメントの動きに先んじた側面があるのかもしれない。 ■アクティビストから圧力がかかる可能性 3Dインベストメントとしては、経営陣の入替や自社株買いのさらなる実施、配当引上げなどガバナンスや株価向上策に加え、事業そのものの刷新のため、従来のリストラ策に加え、BAを含むさらなる人員削減、直営店など店舗の統廃合に加え、京都や東京など優良拠点の売却、ブランドの統廃合、ピーチ・ジョンなどブランドの売却、海外事業からの撤退などを迫ることが考えられよう。 例えば、保有不動産においては、東京・南青山の超一等地にある商業施設「スパイラルビル」、東京本社機能を担う麹町ビル、京都のワコール本社、京都ビル、JR京都駅近くの新京都ビルなどが、売却候補になるかもしれない。 こうしたアクティビストの動き次第では、創業者一族によるMBO、新たなるスポンサー企業からの出資、他の企業との合従連衡なども考えられるが、いずれの施策も、ワコール経営陣による大胆な決断が必要となるだけでなく、ワコールの事業自体に魅力があり将来性がなければ、実現できないものともいえる。 京都の名門企業ワコールが本業不振により、2期連続赤字となり3度目の希望退職募集をする事態となっている。保有不動産や株式の売却など「アセットライト化」を進めるものの、業績は回復しても事業そのものがすぐに回復するものではない。