「高い品質、ブランド力、優れた販売力」だけでは生き残れない…"名門企業ワコール"業績低迷3つの理由
■他の国内ブランド企業でも起こり得る 業績不振の要因には、ライフスタイルの変化とユニクロなどの台頭、ECサイトの立ち遅れ、広がり過ぎたブランドと子会社に加え、中国・米国など海外事業の不振、重荷となる人員と店舗などが挙げられる。 こうした要因の多くは、ワコールに特有のものではなく、多くの日本の企業にも共通する悩みのはずだ。例えば、ブランドの乱立は、資生堂でもみられた(「『中国市場に頼りすぎていた』資生堂1500人早期退職募集で見えた“名門ブランド企業”3つの低迷理由 なぜ“優良ブランド”を抱えるのに活かせないのか」プレジデントオンライン)。 なぜこんなにブランドがごちゃごちゃとできてしまうのか。余程のことがない限り、雇用維持や生産設備維持を前提とした経営のため、組織が肥大化するなかで顧客や市場の変化についていけず、事業構成やブランド数だけが拡大してしまうという、日本企業の体質による側面もあろう。 「物言う株主」であるシンガポールの投資ファンドが筆頭株主となったことで、この先、より一層のリストラや事業整理が求められる可能性があるなか、軽量化・ブランド整理・デジタル化が、ワコールがこの先、復活するには必要なのかもしれない。 もっとも、海外の「物言う株主」に言われるまでもなく、上場する株式会社である以上、株式市場を意識した経営やガバナンスの強化は、ワコールだけでなく、全ての日本企業に課せられた課題といえよう。 ---------- 高橋 克英(たかはし・かつひで) 株式会社マリブジャパン 代表取締役 金融アナリスト、事業構想大学院大学 客員教授。三菱銀行、シティグループ証券、シティバンク等にて銀行クレジットアナリスト、富裕層向け資産運用アドバイザー等で活躍。2013年に金融コンサルティング会社マリブジャパンを設立。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。映画「スター・ウォーズ」の著名コレクターでもある。1993年慶應義塾大学経済学部卒。2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。日本金融学会員。著書に『銀行ゼロ時代』(朝日新聞出版)、『いまさら始める?個人不動産投資』(きんざい)、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(講談社)、『地銀消滅』(平凡社)など多数。 ----------
株式会社マリブジャパン 代表取締役 高橋 克英