『虎に翼』法服から“消えた”刺しゅうは「国家の象徴」だった? 戦後「黒一色」のシンプルなガウンになったワケ
戦後の法服が“シンプル”になったワケ
さて、『虎に翼』の物語は進み、現在は戦後の世界が描かれている。劇中では触れられていないが、昭和22年の「裁判所構成法」廃止によって法服の法的根拠はなくなった。そして昭和24年に最高裁判所が「裁判官の制服に関する規則」を定めたことで、裁判官と書記官のみが現在と同様のガウン型の法服を着用することとなり、今に至っている。 戦後に裁判官となった寅子が着用しているのも、当然ながらガウン型の法服だ。華やかな刺しゅうが印象的だった戦前の法服と比べてかなりシンプルなデザインとなった背景には、何があったのか。 「やはり敗戦の影響が大きいと思います。まず、大日本帝国憲法から日本国憲法に変わったことで、五七の桐紋のような貴族的な意匠は使いづらくなりました。また、戦前は法曹三者だけでなく、駅員、郵便配達員、警察官、刑務官なども『制服』と言えば詰め襟が当たり前でしたが、戦後は自衛隊も含めて基本的に開襟となっています。 戦後、日本にはアメリカ式のものがたくさん入ってきました。法服も、その流れで簡略化されたのではないでしょうか」(刑部教授) 『虎に翼』は後半戦に入り、ますます盛り上がりを見せている。裁判官として、寅子はガウンの法服をまとって今後どのように躍進するのか、楽しみだ。
弁護士JP編集部