[MOM4919]前橋育英DF瀧口眞大(2年)_機を見てハーフレーンに潜った見事なゴラッソ!アグレッシブな右サイドバックが延長の先制弾で全国出場の立役者に!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.9 選手権群馬県予選決勝 共愛学園高 0-3(延長) 前橋育英高 アースケア敷島サッカー・ラグビー場] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 そのスペースが空いていることはわかっていた。ここしかない。このタイミングしかない。スルスルと前線まで上がると、自分の足元にボールが入ってくる。チームメイトとイメージは共有された。当てて、落としてもらって、打つ。もう迷いはない。思い切り右足を振り抜いてやる。 「『もう打っちゃおう!』みたいな感じで、あまり深くは考えずに打ちました。そのあとはもう何より嬉しさが勝っていて、あまり覚えていないですね。でも、これでやっとチームに貢献できたかなと思います」。 今シーズンの前橋育英高の右サイドバックを務めてきた実力者。DF瀧口眞大(2年=横河武蔵野FC U-15出身)が果敢なオーバーラップから突き刺したファインゴールが、苦しむタイガー軍団を鮮やかに窮地から救ってみせた。 前半からボールフィーリングは悪くなかった。冬の全国切符を懸けた高校選手権群馬県予選決勝。インターハイ予選で苦渋を飲まされた共愛学園高を向こうに回し、瀧口は積極的なオーバーラップを繰り返してチャンスメイク。前半10分には完璧な右クロスを送り込み、FW佐藤耕太(3年)のボレーは相手GKのファインセーブに阻まれたものの、完璧な軌道で決定機を演出する。 一方、守備面でも終始安定感のあるプレーを披露。「やっぱりプレミアだと相手のサイドハーフはみんなびっくりするぐらい凄くて、県予選とプレミアだと少し違う部分があるので、対人の部分ではプレミアよりは自信を持ってできるなと思います」。今シーズン1年を掛けて、プレミアリーグで世代有数の左アタッカーたちと対峙し続けてきたことで、間違いなくポジティブな余裕を纏うようになっていた。 前橋育英は攻勢を続けたものの、なかなか共愛学園の牙城を崩し切れず、試合は0-0のままで80分間が終了。試合は延長戦に突入する。ここまではインターハイ予選の準決勝と似たようなシチュエーション。だが、チームには夏の屈辱的な敗戦から確かに積み上げてきたものがあった。 「延長に入った時は、まず守備面で1本のカウンターだったり、ロングスローだったり、セットプレーでの失点はディフェンスラインとしては絶対になしだということを共有して、あとは絶対に前線の人たちがゴールを決めてくれると信じていました」(瀧口) 決定機はアグレッシブな右サイドバックにやってくる。延長前半7分。ボランチのMF柴野快仁(2年)が中央から右へ展開すると、絶妙の位置に瀧口が上がっている。「斜めのハーフレーンの1.5列目ぐらいのスペースがずっと空いていて、あそこにスッと入れば相手のディフェンダーもたぶん出づらいなと思っていたんです」。 横パスを受けると、たどるべきボールと自分の道筋がはっきりと頭の中に浮かび上がる。「佐藤耕太選手は落としが上手いので、そこにワンタッチで入れれば自分に返ってくるなと思いました」。まさにイメージ通り。エリア内の佐藤に縦パスを刺して、そのままゴー。丁寧なボールが返ってくる。もう迷いはない。思い切り右足を振り抜いてやる。 「普段あまり点を獲るタイプではないんですけど、ああいう良いところでボールを受けて、侵入して、思い切りよく足を振ってくれたので、瀧口も気持ちが入っていたのがああいうゴールに繋がったのかなと思います」(MF石井陽) ゴールネットへ収まったボールを見届けると、アップエリアにいたチームメイトの元へ全速力で走り出す。あっという間に歓喜の輪の中に飲み込まれていく背番号3。新チームになって公式戦2点目だというゴールを、この大事な試合に持ってくるあたりは、やはり『持っている』ということなのかもしれない。 チームは10分にFWオノノジュ慶吏(3年)が、延長後半6分にFW大岡航未(2年)が相次いでゴールを叩き出し、終わってみれば3-0で大きな勝利を手繰り寄せる。だが、やはりこの日の主役は「両親も見に来ていたので、ゴールを見せられて良かったです」と笑顔を見せた先制弾の右サイドバックであることに、異論の余地はないだろう。 2年生ながら名門で定位置を掴むと、世代最高峰のプレミアリーグでも十分に存在感を打ち出している瀧口だが、昨年まではまったく違うポジションでプレーしていたという。「2年生になってからじっくりとサイドバックをやり始めたんですけど、もともと1年生のころはボランチでした」。 だが、兼ね備えていたポテンシャルは、コンバートされた新しいポジションで一気に開花する。「1年生の最後ぐらいはちょっとサイドバックをやっていて、その時は『何で自分なんだろう?』と思ったんですけど、2年生が始まって本格的にやり始めてから、割とサイドバックだと人がプレッシャーに来ないというか、360度の視界から180度の視界になったので、そこで余裕が出てきたことで、『今は何をしよう』というのは考えられるようになってきたと思いますし、かなり楽しくやれています」。今では右サイドバックの役割も、かなりしっくり来ているようだ。 他の選手と同様に、瀧口にとってもインターハイの県予選敗退は、小さくないダメージを突き付けられる経験だったが、同時に自分がこのチームの選手を代表してピッチに立っているということを、改めて再確認したという。 「応援してくれているチームメイトだったり、観客の人に対して、自分が試合に出ていることへの責任感は感じましたし、このチームでプレーするにはしっかり責任と自覚を持ちながら、『ちゃんと自分がやらなきゃな』と思いました。それこそ試合に出たくても出られない3年生がいる中で、自分は2年生という立場で出させてもらっているので、3年生の分まで本当に頑張りたいですし、3年生をまだまだ引退させないということは考えてプレーしています」。 たどり着いた全国の舞台。その前に控えているプレミアリーグでさらなる研鑽を積み、大きな成果を引き寄せてやる。「全国の前にまずはプレミアがあるので、プレミアで残り試合は全部勝って、上位に食い込んで、そこからまた全国大会に向けて、気持ちを切り替えられたらなと思っています。全国ではクロスの部分でのアシストはもっとどんどん狙っていきたいですし、ゴールも狙える位置だったら右足もどんどん振って、チームの勝利に貢献していきたいなと思っています」。 新たなポジションで秘めていた才能が解き放たれつつある、前橋育英の右サイドバック。瀧口眞大の攻守に関わるハイパフォーマンスは、チームのさらなる成長にとっても、全国の舞台で躍進を遂げるためにも、絶対に欠かせない。 (取材・文 土屋雅史)
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