薄焼き「オランダせんべい」ご当地味に 山形・酒田米菓がOEMに注力
薄焼きの「オランダせんべい」を主力とする酒田米菓(山形県酒田市)が、相手先ブランドによる生産(OEM)に力を入れている。ここ10年で全国43社から受託、スーパーなどが企画するプライベートブランド(PB)商品も請け負う。ご当地商品がブームになる中、焼き上げてから味付けする製法が対応を容易にし、各社からの生産受託料は自社製品販売と肩を並べる収益の柱に育っている。 【写真】せんべいが焼き上がってすぐ、後方の回転ドラムに入れ味付けする 秋田県の菓子専門卸、北国さくら本舗(北秋田市)は、2017年に名産のきりたんぽ鍋、20年に県内で作付けが増える枝豆の味を売りにした商品を酒田米菓に委託、オランダせんべいに似たパッケージで発売する。原料もあきたこまちにこだわり、秋田らしさを前面に出した。 担当者は「ご当地色を掲げたPB商品を作りたかった。少量なので他社生産を検討する中、オランダせんべいの知名度と人気が決め手になった」と振り返る。 同じく宮城県石巻市の一般社団法人カイタクはホヤの消費拡大を目指し、チーズのまろやかさも合わせ食べやすくした「薫るチーズの三陸ほやせんべい」を共同開発。木の屋石巻水産(石巻市)は三陸沖産オキアミを生かしたえび風味、缶詰商品の端材を生かした「鯨大和煮風味」と「牛たん風味」を商品化した。 OEMは東北以外でも「たこ焼き」「沖縄えびたま」「宮古島かつお」「ハイサイソース」など、各地の特産を生かし、それぞれ支持を得ている。 開発ラッシュの背景に、酒田米菓が「元祖」とうたう厚さ3ミリの薄焼き技術に加え、商品展開のしやすさがある。 オランダせんべいの場合、極薄の生地生成と厚さ3ミリにそろえる焼きの工程を経て、せんべいを回転ドラムに入れサラダ油と塩をまぶして完成させる。受託する他の商品も同じ工程で製造でき、最終味付けとパッケージを変えれば多種展開が容易だ。コメどころの中堅メーカーとして外国産米でなく、国産米を使っているのも強みという。 酒田米菓の担当者は「商談会などでの売り込みが奏功し、近年は相手先からコラボを持ちかけられるようになった。ご当地のPB商品が盛んになる中、製造ライン増設も視野にOEMを伸長させたい」と話す。
河北新報