【霞む最終処分】(39)第7部 原発構内の廃棄物 高線量汚泥満杯近づく 一時的対応では限界
東京電力福島第1原発事故を巡っては、中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に搬入された除染土壌と同様、廃炉作業が続く原発構内でも放射性物質を含む大量の廃棄物が保管されている。増え続ける汚泥やがれきに加え、将来には溶融核燃料(デブリ)取り出しを控える。これらの処理・処分方法は明確に定まっておらず、福島県外での最終処分が法的に担保された除染土壌以上に、処分の道筋をつけるハードルは高い。事故発生から13年余りが経過した原発構内の廃棄物に迫る。 東京電力福島第1原発の敷地南側には、処理水を入れた保管タンクが林立している。その一角、谷間のような場所に灰色の箱が並ぶ。 箱の中身は汚染水を多核種除去設備(ALPS)で浄化する際に出た放射性汚泥(スラリー)だ。HIC(ヒック)というポリエチレン製の特殊容器に入れた上でコンクリートの箱に収め、周囲の空間放射線量の上昇を抑えている。 HICは約3立方メートルで、1カ月に平均14基ほどのペースで増え続けている。現在の保管容量は4576基だが、4月25日時点で既に4347基、全体の95・0%に達した。「逼迫(ひっぱく)状態だ」。汚泥は処分方法が定まっておらず、東電の広報担当者は危機感を隠さない。
◇ ◇ 原子力規制委員会は2022(令和4)年、福島第1原発構内にHICの置き場を早期に増設するよう指示した。保管場所を確保できなければ、ALPSの稼働停止を余儀なくされ、汚染水の処理が滞る恐れもある。 東電は汚泥を脱水した上で固体にし、減容化する処理施設の建設を計画している。この計画に対し、規制委は飛散対策について安全対策が不十分と判断。東電は当初、2022年度に予定していた処理施設の運用開始時期を見直すこととなった。設備は設計中の段階にとどまり、稼働は2026年度末ごろとなる見通しだ。 東電は置き場の増設といった対策では限界があることから、一日も早い処理施設の完成を目指す考えだ。だが、廃止措置工学を専門とする福井大客員教授の柳原敏(日本原子力学会廃棄物検討分科会主査)は「減容化して保管容量をいくら稼いでも、問題の先送りに過ぎない」と指摘する。 ◇ ◇