ゆりやん×唐田えりか×剛力彩芽、本気で挑んだプロレスシーン 想像もできない感情と表情が生まれたのはこの3人だからこそ
◆『極悪女王』がそれぞれの転機に
――お話を伺っていても、皆さんが本シリーズに情熱を注いだことがひしひしと伝わってきます。皆さんにとって、本シリーズで得たものはどのようなものだと感じていますか? ゆりやん:得たものがありすぎて、逆に『極悪女王』に出会っていなかったら、私はどうなっていたんだろうと思うくらいです。オーディションに受かった当初は「Netflix作品だ! イエーイ!」という感じだったんですよ。でも撮影をしているうちに、自分一人では出せなかった表情や感情をたくさん引き出してもらった。それは人生で初めての体験でした。悲しいシーンだから涙を流そうとか、怒っているシーンだから怖い顔をしようとか、そういうことではなくて、本当の感情が湧き上がってきた。表現の仕方も分からなかったような部分を含め、こんなに自分を思い切りさらけ出すことは、芸人としても人間としても今までできなかったことだなと思っています。 唐田:私もレトリと同じで、この作品に出られていなかったら、どうなっていたんだろうと思うくらい転機となった作品です。やっと胸を張って「代表作です」と言えるものができたかもしれないという、うれしさもあります。お仕事がない時期に、長与役を私に決めてくださった白石監督やスタッフさんにも感謝しています。そしてずっと私に向き合ってくださった事務所の社長やマネージャーさん、家族がいるからこそ、私は頑張れています。その人たちに届けられる作品ができて、本当にうれしいです。 剛力:30代に突入して、皆さんがイメージしていなかった役に挑戦することができました。ここまでやることができたのは、プロフェッショナルな皆さんが全力を注いでいる環境があったからこそ。また私自身、「自分を俯瞰で見ること」を学んだ作品という気もしています。プロレスシーンでは、事前にどうやって動くかを決めてから、リングの上で本気でぶつかり合っています。怪我をするリスクも伴うものです。想像もできない感情が湧き上がってきたとしても、そんな時どこか俯瞰で見ている自分がいて「相手にも怪我をさせない、自分も怪我をしない」ということも大事にしていました。冷静に自分を見つめるという、新しいお芝居の仕方を発見したなと思っています。 ――劇中のダンプ松本は、怒りや悔しさを原動力にヒールへと変身を遂げます。皆さんにとって、この時、こんなことをきっかけに新しい自分に変身できたと思うようなご経験があれば教えてください。 ゆりやん:芸人になって1年目くらいの頃、「自分は何を面白いと思って、芸人をやっているのか」とまだよく分からなかった時に、先輩とみんなでご飯に連れて行ってもらったことがあって。そこで“怒られるノリ”みたいな流れになって、わーっと先輩に怒られたんですね。「お前はどう思っているんや」と言われて「ホンマに反省しています」と答えたら、「お前は真面目すぎる」という話になって。そこで「なるほどな。私は真面目すぎるんや」と思ったんです。また『さんまのお笑い向上委員会』に出させていただいた時にも、「全部ホンマのことを言わなくてもいいんだな」ということを学びました(笑)。先輩たちの姿から「お笑いとは」「ボケとは」ということが分かってきて、だんだん今のように自分が「楽しい」と思える動きができるようになりました。 唐田:変身という言葉がぴったりと当てはまるかは分かりませんが、敗者髪切りデスマッチのシーンは、自分にとって大きな経験になりました。見た目が坊主になったということもあるかもしれませんが、自分としての覚悟を表現できたシーンであり、みんなの覚悟が集まってできたシーンでもあったなと感じています。あのシーンを乗り越えたことによって、「この作品が自分の覚悟です」と言えるようになりました。 ――ゆりやんさんは、あのシーンで震えと涙が止まらなかったとおっしゃっていました。 唐田:おそらく、私よりもレトリの方が緊張していたと思います。地毛を切ることになるので、一発本番であの流れを撮り切らなければいけないわけですから。本番前に、レトリに「大丈夫だよ!」と声をかけた気がします。私としては、髪がなくなった自分を見て落ち込むこともなく、なんだか笑ってしまいました(笑)。 ゆりやん:頭の形が非常にきれいなんですね。一緒に旅館に泊まっていたんですが、敗者髪切りデスマッチの次の日の朝に浴衣を着たえりかちゃんを見たら、一休さんみたいで(笑)。神々しかったです。 剛力:新しい自分に変身したなと思うのは、5歳の時にダンスに出会ったことです。私はすごく人見知りで、誰かと話すことがとても苦手だったんですが、ダンスに出会った時に「自分の感情を表現できるのはこれだ!」と思いました。また7歳の時には、遊園地で遊んでいる時にスナップ撮影をしていただいたことがありました。そこでカメラマンさんに撮ってもらった記憶があまりに楽しくて忘れられず、母親に「私はモデルになる」と断言して。そこでも「私がやりたいことはこれだ」と明確に思いました。そこからブレずに今に至るので、早いタイミングで好きだと思えることに出会えて、私はラッキーだなと思います。モデルもダンスもお芝居も「好き」という気持ちで、ずっと走り続けています。 (取材・文:成田おり枝 写真:高野広美) Netflixシリーズ『極悪女王』は、Netflixにて9月19日より全5話一挙世界独占配信。