ゆりやん×唐田えりか×剛力彩芽、本気で挑んだプロレスシーン 想像もできない感情と表情が生まれたのはこの3人だからこそ
◆伝説の敗者髪切りデスマッチ! 唐田えりかが坊主に
――もともとプロレスに対しては、どのようなイメージを持たれていましたか。 ゆりやん:私はプロレスについて、まったく詳しくなくて。オーディションに受かってから、当時の資料やダンプさんに関しての本を読んだり、ダンプさんご本人からお話を聞いて、知識をつけていきました。ダンプさんは「最恐レスラー」と言われていますが、もともとは松本香さんというめっちゃかわいくて、めっちゃピュアでまっすぐな女の子なんですね。それが環境や人間関係、そして自分に対してももどかしさを抱いて、ダンプ松本というヒールになっていく。日本中の全員に嫌われてもヒールに徹していったダンプさんに、私は本当の強さ、覚悟、やさしさも感じています。すべてが魅力的で、大好きな方になりました。 唐田:私は小学生の頃に一度、プロレスを観たことがあって。アジャコングさんの試合だったんですが、あまりにも怖くて座っていられずに、立って陰から観ていたらアジャコングさんに標的にされてしまった思い出があります(笑)。オーディションに受かった時に、プロレスを好きにならなければいけないと思ったので、長与さんに「プロレスに対して怖いという思いがある。長与さんはどう思っていますか?」と正直にお伺いして。そこで長与さんは、「プロレスは芸術だと思っている」とおっしゃっていました。「自分が戦って、何回も立ち上がっていく姿を観てもらうことで、みんなも自分自身をそこに投影して、一緒に戦うことができるのがプロレスだ。みんなを主人公にできるのがプロレスだ」と。私も実際に長与役を演じてみて、試合会場のエキストラさんの声を聞いているだけでも、パワーを感じることができました。「プロレスは芸術だ」という言葉が、やっと分かるようになりました。 剛力:私もこの作品に携わらせていただくまでは、ほとんどプロレスを観たことがありませんでした。たまにテレビでやっているのを観ても「怖い、痛そう」という感覚だったんですが、実際に携わらせていただくと、ものすごく奥深い世界だと思いました。相手と闘うということは、お互いの信頼関係や、思い合っている感覚がないと到底できないこと。相手と闘うことのすばらしさ、痛さ、悔しさ、苦しさをたくさんの人に見せていくというのは、お芝居にも通じるものだなと感じて、プロレスの見方がそれまでとはまったく変わりました。今では試合観戦が大好きで、長与さんが設立された女子プロレス団体 Marvelous(マーベラス)の試合も定期的に観に行かせていただいています。 ――お三方が挑まれたプロレスシーンの迫力には、本当に驚きました。印象深いプロレスシーンや、お互いの存在が励みになったことがあれば教えてください。 ゆりやん:全部の試合が印象的なんですが、ダンプ松本と長与千種の敗者髪切りデスマッチのシーンにはたくさんの思い出があります。2人は一緒に仲良く過ごしていたのに、次第に心がすれ違ってしまうんですが、えりかちゃんと「ダンプさんと長与さんの関係性を体験するために、私たちも話や挨拶をしないようにした方がいいかな」と話し合って、そこからえりかちゃんと挨拶や話をしなくなったんです。えりかちゃんが誰かと楽しそうに話していると「腹立つ!」と思ったり、私のことを本当に嫌いになっちゃったのかな…と感じたりと、リアルな感覚が生まれてきました。敗者髪切りデスマッチの撮影の前日にリハーサルをしたんですが、そこでもあまり話をせずにやっていたら、なかなかうまくいかなくて。そこでえりかちゃんが「レトリ、ご飯行かない?」と声をかけてくれて、2人でご飯に行きました。久しぶりにえりかちゃんとたくさんしゃべって、そうしたら次の日の敗者髪切りデスマッチのシーンも息ぴったりで、ものすごくうまくいったんだよね。 唐田:本当にそうだったね。 ――お芝居のために「距離を置く」という取り組みをしたことで、より密なコミュニケーションが生まれたのですね。 ゆりやん:敗者髪切りデスマッチのシーンは「ここでこう持つよ」「これくらいやるよ」とえりかちゃんとたくさん話し合って、決めていきました。えりかちゃんは実際に髪の毛を切っていて、ものすごい覚悟で挑まれていました。切る方を演じている私は、なぜだか分からないけれど震えと涙が止まらなくなって。また、クライマックスの試合も印象的です。お客さんも全員でタイムスリップして、その時代を一緒に体験したような、信じられないような空間でした。 ――唐田さんは、印象的なプロレスシーンや技などはありますか? 唐田:長与さんは蹴りが得意な選手ということもあり、みんなとは別に居残り練習をして、蹴りの特訓をしていました。長与さんの得意技で、ニールキックという技があります。難しい技なので、スタッフの皆さんも実際にできるとは思わず、「代役を立ててやる」という話も出ていたんですが、私は負けず嫌いなので「絶対に自分でニールキックをやりたい」と挑戦させていただきました。みんな本気でプロレスシーンに取り組んだので、そのことによって生まれた印象的な表情もたくさんあります。倒れ込んでしまったライオネス飛鳥の顔、覚醒したダンプ松本に見下ろされた時の顔など、お二人の顔を見ることによって自分でも想像していなかった感情がたくさん湧き出てきました。 剛力:私も同じように感じています。ジャガー横田と戦った時の、「起きろよ!」という千種の目は、私にとって忘れられないものになっていて。「この人はスターだ。輝いている」と鳥肌が立ちました。その時に、飛鳥としては「千種を輝かせるために生きよう」と覚悟が決まって。あの唐ちゃん(唐田)の目には、ものすごい情熱が宿っていたように思います。クライマックスの試合で、ダンプが「来い!」と言った時の顔も忘れられない! 私は2人の闘いをロープ際で見ていることが多かったので、ゆりやんと唐ちゃんのエネルギーは本当にすごいなと驚いていました。私は一番の特等席で、その表情を見られたんです。