名物・つるべ打ち呼んだ「攻める走塁」 山梨学院、理想的攻撃で頂点
◇センバツ高校野球最終日(1日)決勝 ○山梨学院7―3報徳学園(兵庫)● 高校球界において、長い冬の中にいた甲斐の国に暖かい春の日差しが届いた。春夏を通じて山梨勢初優勝を果たした山梨学院が、望んでいた通りの展開に持ち込み、願ってやまなかった結果を得た。 【山梨学院vs報徳学園の熱戦を写真で】 「勢いに乗りだしたら止まらない」とナインが声をそろえる名物・つるべ打ちが生まれたのは、2点を追う五回。その背景には、チームが取り組み続けてきた攻める走塁があった。 1死一、二塁で、星野泰輝が左前に勝ち越し打を放った場面。主演が星野なら、助演で心憎い仕事をしたのが二塁走者の伊藤光輝だ。 相手捕手の堀柊那は今大会屈指の強肩だが、じわりじわりとリードを取り、圧力をかけた。星野の3球目のボールでは堀の二塁送球をかいくぐって、帰塁しセーフ。 その動きを、打席で目の当たりにした星野は考えた。「相手は送球しやすいように、外角が増えるのではないか」。目付けを外に置くと、カウント3ボール1ストライクから来たのは外角へのチェンジアップ。たやすい球ではなかったが、うまくバットをのばして左前適時打とした。 わきかえる山梨学院ベンチ。その後も打線がつながり、結局、この回だけで6安打7得点と集中打を浴びせた。吉田洸二監督が「これは優勝するようになっているんだな」と確信するほど理想的な攻撃だった。 九回2死の守り。最後の飛球の先にいたのは星野だった。「これで勝った。決勝の甲子園はとにかく楽しかった」 スカイブルーが印象的なユニホームを着たナインがマウンド付近で大喜びした後、ゲームセットしたのは午後2時20分。野球の神様が気をきかせたのだろうか。甲子園の空は青く晴れていた。【岸本悠】