【年金】結局、いつ受給するのが得?意外と知らない「損益分岐点」と繰上げ・繰下げ受給の注意点
年金を繰下げ受給すると、1ヶ月あたり0.7%増額できる
年金の「繰下げ」とは、繰上げとは反対に65歳より後(実際には66歳以降)に受給すること。 遅らせた分、1ヶ月あたり0.7%増額して年金額で受給可能です。66歳以降75歳までの間、1ヶ月単位で受給する時期を選ぶことができます。 年金を繰り下げ受給する際に意識しておきたいポイントは以下の通りです。 ●繰り下げするときの主な注意点 ・66歳以降75歳まで繰下げ可能(1952年4月1日以前生まれの方は、70歳まで) ・繰下げする時期により1ヶ月あたり0.7%増額される。 ・加給年金や振替加算額は増額の対象外。(繰下げの待機期間中でも、加給年金額や振替加算を受給できない) ・75歳を過ぎて請求しても増額率は増えない。 ・65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までに、障害給付や遺族給付を受取権利があるときは、繰下げの申し出ができない。 ・66歳に達した日以後の繰下げ期間中に遺族年金などの受給権が発生した場合、その時点で増額率が固定される。それ以降に遅らせても増額率は増えない。 ・老齢厚生年金、老齢基礎年金の両方、あるいは一方のみ繰下げをすることが可能。 増額率 = 0.7% × 65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数 Aさんが、70歳まで繰下げた場合、年金額は以下のように変化します。 ・老齢厚生年金120万円 ×(1+0.42)= 170万4000円 ・老齢基礎年金72万円 ×(1+0.42)= 102万2400円 ・繰上げ合計170万4000円 + 102万2400円 =272万6400円 70歳から生涯、この年金額となる代わりに、70歳になるまで公的年金は受給できません。 自分のライフプランにあわせて、受給時期は慎重に検討しましょう。
老齢年金、何歳から受け取るのがお得?受け取り額をシミュレーション
年金を繰上げ・繰り下げした場合には物価スライドなどをのぞき、請求した時点での年金額が固定されます。 繰下げすることで収入が増えるものの、同時に国民健康保険、後期高齢者医療保険、介護保険料の支払いが増える可能性も捨てきれません。 本来受給できる年齢(65歳)と比較して、何歳で受給額が超えるのでしょうか? 今回は、Aさんの「損益分岐点」をチェックしていきましょう。 ●65歳から192万円の年金を受給できるAさんが「繰上げ」をした場合 64歳の手取りの損益分岐点が低いのですが、これは65歳からは雑所得の年金控除が60万円から110万円に引き上がるためです。 所得税や住民税、国民健康保険や介護保険に対する賦課基準額が少なくなり、損益分岐点が引き下がっています。 年金の繰り下げについては、年金事務所や各共済組合で試算してくれます。 健康保険などの社会保険料は各市区町村の窓口で確認できますし、市町村によってはウェブサイトで公開されているところもあります。 ご自身の所得をもとに、その都度計算してみてもよいと思います。 ●65歳から192万円を受給できるAさんが「繰下げ」をした場合 上記の表などから、繰上げと繰下げ受給の65歳受給開始と比較した損益分岐点は、以下のようになります。 ・60歳受給開始の受給額を65歳受給開始が上回るのは、79~81歳 ・65歳受給開始の受給額を70歳受給開始が上回るのは、82~84歳 ・65歳受給開始の受給額を75歳受給開始が上回るのは、87~88歳 貯蓄が少なく生活費用の工面に不安を抱えているにも関わらず、年金を繰下げることはなかなか考えられないでしょう。 繰下げをするまでの間な年金収入がないため、生活できるような別の収入や貯蓄を準備するのも大事なことです。