「美声と名演技にメロメロ…」昭和ロボアニメを彩った「美形悪役キャラ」の悲しきドラマ
■元祖美形悪役? 仮面の下の素顔に注目した「プリンス・シャーキン」
最後に、市川治さんが演じた元祖・美形悪役ともいえるのが『勇者ライディーン』(1975年より放映)に登場した、“悪魔王子”こと「プリンス・シャーキン」だ。妖魔帝国の司令官として第2話より登場したシャーキンは、主人公・ひびき洸のライバル的存在である。 青い肌に金髪のおかっぱ、仮面で素顔を隠していた彼は、ロボットアニメの「元祖・美形悪役」ともいわれている。ただし、第9話にて“砂場金吾”の名で転校生として現れたときの顔は目つきの鋭い悪役顔に見えたが、それでも多くの視聴者に支持された。そして第27話でシャーキンが死亡すると、長浜監督のもとに多くの女性ファンから抗議の手紙が届いたという逸話まである。 ちなみに『ライディーン』の監督は2人いて、1話から26話を担当したのが富野喜幸(現、由悠季)監督で、27話から50話を担当したのが長浜忠夫監督だ。実はシャーキンの発案者は富野監督である。 いまでこそ、悪役の人気美形キャラの存在は当たり前になったが、そのルーツをたどると昭和のロボットアニメに行き着く。しかもその多くを演じていたのが、2009年に惜しまれつつ亡くなられた声優の市川治さんだ。悪役の美形キャラが定着した背景には、市川さんの甲高い美声と名演技があったのは間違いないだろう。 なお、筆者は美形の悪役といえば『惑星ロボ ダンガードA』の「トニー・ハーケン」(声:山田俊司氏)も大好きだったが、みなさんの推し「美形悪役」は誰だっただろうか。
高塔琳子