親が認知症になると銀行預金を引き出せない…… その前にやっておきたい対策とは?
親が高齢になり介護が必要になると、子が直面するのは「どうやって親のお金を管理するか」という問題です。 特に認知症になってしまった場合は、銀行口座が封鎖されてしまうこともあります。本記事では、そうなる前に考えておきたい対策を解説します。
親が認知症になるリスク
認知症になる人は、高齢になるにつれ増えていきます。厚生労働省老健局の資料によれば、80代前半で認知症または軽度認知障害がある人は22.4%ですが、90歳以上では64.2%に増加するということです。「自分の親も認知症になるかもしれない」と考えて、対策を講じておくと安心でしょう。 認知症になったときに想定されるトラブルのひとつが、銀行預金を引き出せなくなることです。銀行は高齢の預金者の認知判断能力が低下していると判断すると、預金を凍結してしまうことがあります。そうなると家族であっても、簡単に預金を引き出すことはできません。 成年後見制度(法定後見)を利用し法定後見人を立てれば、預金を引き出すことはもちろん、親が所有する不動産を売却することもできますが、家庭裁判所への申し立てから、調査や審判を経て後見人が決まるまで数ヶ月かかりますし、費用もかかります。 また、後見人の候補者として家族を推薦しても、家庭裁判所が専門家(弁護士、司法書士など)を選任することもあり、その場合は後見人に報酬を支払い続けなければなりません。家族が後見人になった場合も、家庭裁判所が後見監督人を選任すれば後見監督人に報酬が必要です。 とはいえ、多くの場合で引き出したいのは親本人の日常の生活費や介護費用などで、決して大きな金額ではないことから、法定後見の手続きをためらうご家庭も多いでしょう。そこで、認知症になる前の元気なうちに手続きをしておけば、家族は預金を引き出せるので、その方法を紹介します。
元気なうちに検討したい対策
(1) 代理人カード 近年、代理人キャッシュカード(代理人カード)を発行してくれる銀行が増えており、預金者本人の意思が確認できれば一定の親族へ代理人カードの発行が可能です。代理人カードがあれば、日常生活に必要なお金を家族が引き出すことができるでしょう。 代理人カード発行の対象となる家族の範囲や手続き方法は、各銀行によって違います。まずは親と一緒に銀行の窓口に出向き、相談してみましょう。 (2) 代理人登録の手続き 代理人カードは一般のキャッシュカードと同様に、1日に引き出せる金額に制限があります。例えば、有料老人ホームへの入居が決まり、入居一時金としてまとまった金額を支払いたいときなど、代理人カードで引き出すのは大変です。 また、普通預金が底をついてきて、定期預金を解約したいといったときにも困ってしまいます。そこで、まとまった金額の引き出しができる代理人の登録をしておくと安心です。 「代理人予約サービス」「予約型代理人」「代理人指名手続き」など、各銀行によって呼び方や取り扱いが少しずつ違いますが、元気で判断能力もあるうちに代理人の登録手続きをしておけば、判断能力が低下した後にも、代理人が本人に代わって普通預金の引き出しや定期預金の解約などができます。 もちろん、法定後見人に比べれば、可能な取引の範囲は限られていますし、銀行からは法定後見の手続きを勧められるでしょう。しかし、代理人カードや代理人登録でできる範囲だけで困ることがなければ、子どもが代理人として銀行預金を管理するのでもよいのではないでしょうか。