息子の3年の不登校で外科医が転職を決断した訳 レール上を歩いてきた父親が“正論”を手放すまで
「他の時間帯なら少し席を外すこともできますが、当直中は人の命を預かる仕事として全責任を持って集中しなければなりません。そのためにはまず自分自身が安定していないといけないのですが、気持ちが乱れることもありました」 大澤さんが私のブログにたどり着いてくださったのはそんな頃です。 ■先は長いと覚悟を決める 「息子が中1の秋か冬だったと思います。妻が『こんなのがあるよ』とランさんのブログを見せてくれたんです。そこには実際の経験に基づき不登校の様子が段階別に書かれていました。それを見て、『そうか、こういう過程をたどって回復していくのか』と道しるべを得て、真っ暗な闇の中に光が見えたような気がしました」
「不登校が始まったばかりの人から回復段階に入った人まで、さまざまな状況の親御さんたちと出会えたことにもずいぶんと助けられました。みなが同じ境遇なので話を素直に受け入れられるんですね。相手の気持ちが理解できるし、私の気持ちも理解してもらえる」 「ただその一方で、うちはまだ不登校の初期段階で先は長いなと。妻と覚悟を決めたものの、自分の子だけ回復過程をたどっていけないのではと不安に押しつぶされそうになることもありました。この頃が精神的にいちばんきつかったですね」
そんな大澤さんがいろいろ考えた末に、ある大きな決断をされます。 「思い切って仕事を変えることにしたんです。外科医として長く急性期医療に携わっていましたが、回復期のリハビリにシフトすることにしました。50歳を前にしてそれまでの仕事に閉塞感を感じていたことと、医師として今までとは違う貢献ができないか自問自答した末の決断です」 同じ医療職とはいえ、それまで積み重ねてきた技術や知識を手放すのは大変なことでしょう。実はそこには大澤さんの「子に変化を望むのであれば、まず、自分が変わらなければ」という思いがありました。不登校生の親御さんの多くは子どもが変わることを期待しますが、大切なのは最初に親が変わっていくことなのです。