92歳女性が「葬式はしない」と決めた納得すぎる訳 お墓問題は「体力気力があるうちに決着つける」
お寺から「苗字が違う人のお骨(こつ)は入れられない」と断られたのです。これを「一墓所一家名」というそうですが、数十年前までは、家制度の考え方がお墓にも適用されるのが一般的でした。 仕方がないので私は霊園墓地を探して使用料を払い、墓石を建てて、夫の両親のほうのお墓にも分骨するなど、たいへん苦労したものです。 その後、そのお寺もお墓の承継者が途絶えるケースが続出したため、「一墓所一家名」の方針を変えたようでした。共同の供養塔を建てて、そこへお墓から移し替えたお骨は、永代供養ができるようになったのです。
なので、現在実家のお墓に入っている5体のお骨を、私の死後、供養塔に移す手続きを取りました。私も死んだらそこへ納めてもらい、いずれ永代供養をお願いすることに決めたら、ほっとして肩の荷が下りました。なぜなら、お墓問題は私の代で終わりにしたいからです。 1人しかいない娘はといえば、親の私と一緒のお墓は嫌で、ペットの猫たちと入ると言っていますから、「墓守」を期待するのは無理というものです。 お墓というものは、代々引き継がれることが前提となっています。しかし、いまはお墓を引き継ぐ人がいないケースが増えました。
私が「ファミレス時代」と名づけたように、少子化や未婚者の増加などによって家族自体が少なくなっているからです。家族がなくて子どもがいなかったら、「お墓の承継」はできません。 その代わり、合同墓や合同納骨堂などが多くみられるようになり、多様なお墓や埋葬の形が提案されています。その人の事情や、価値観に合わせて、お墓が自由に選べる時代になったのです。 どんな形のお墓に納まるのが人に迷惑をかけずにすむのか、また自分らしいのかを考えて、あまり高齢にならないうちに決めておきたいものです。
■自治体が管理する公営墓地を増やしてほしい 私がお墓のあり方を考えさせられたのは、「高齢社会をよくする女性の会」の仲間と北欧を訪れたときでした。 デンマークとスウェーデンでしたが、両国ともクリスチャンの国です。日曜日になると教会の前でお年寄りが集い、乳母車の赤ちゃんをあやしたりしていました。 そういった教会を中心にしたコミュニティでは、キリスト教によるお墓が根づいている一方で、地方自治体が管理運営するお墓もありました。