競技人生が一変するケガを経て。飛び込み・金戸凜は「今は切実に五輪に出場したい」
今は切実にパリに行きたい。でも、出るだけでいいというのは違う
来年の2月に向かって今、金戸は遅くとも確実に前進を続けている。そして、その先には7月に開催されるパリ・オリンピックが控えている。 「祖父母、両親、兄、姉が選手なので、取材ではオリンピックへの意気込みをという質問をされてきました。思春期の頃は“金メダルを獲りたい”と言うのがイヤだった。みんな同じこと言ってるし、言わされている感がすごく強くて。 でも、東京オリンピックをケガで逃したときに、それがガラリと変わって、オリンピックに出場したいという気持ちを前面に出せるようになった。本当にあのときは悔しかったんですね。だから、今は切実にパリに行きたい。でも、出るだけでいいというのは違うと思う。 ここまで戻ってこられたので、ここから先はケガをしないでどこまで伸ばしていけるかが重要になります。飛び込みは圧倒的に中国が強くて、もしかしたら勝つのは無理かもしれない。ただ、そこで自分が納得できる、ベストの演技ができるようにしたいと思っているんです」 プールサイドから娘を見つめる父であり、コーチでもある恵太さんが“飛び込みの神様がこれからは…”と呟いたのが、強くココロに残った。
取材に伺った日の練習メニュー
まずはプールサイドでストレッチ。時間をかけてケガをした場所をカバーしていく。そして、テーピング。写真にあるように膝をしっかりとホールドできていないと、さらなる障害を誘発する可能性もある。 とにかく慎重に巻く。終わると、3mの飛び板を使って30本ほど跳ぶ。一本一本を父・恵太さんに見てもらい、空中動作や入水の角度など細かいところを指導してもらう。約1時間の練習だった。
プロフィール
金戸凜(かねと・りん)/2003年生まれ。152cm。17年、13歳のときに国際大会派遣選手選考会の3m板飛び込みで優勝。19年、日本室内選手権飛込競技大会で優勝。同年、世界選手権で17位。肩のケガで東京オリンピックを断念。22年、世界選手権の3m飛び板シンクロで準優勝。今年9月、日本選手権の高飛び込みで復活となる優勝を果たした。
取材・文/鈴木一朗(初出『Tarzan』No.867・2023年10月19日発売)