日陰を歩き続けてきたアイドルが「トロッコ」でかなえた夢、スケーターに重ねる思いとは…清司麗菜の#skatelife
でも、白井選手はすごかった。インスタグラムには日々、練習に打ち込む様子を投稿し、仲間とスケボーをする姿を見せ続けている。華やかな世界だけでなく、日常的なスケートライフを見せるところに、白井選手の人柄が表れている。
彼はエンターテイナーだ。実際に取材をした時もすごく気さくでユーモラスに話をしてくれたし、試合中も会場を盛り上げる。スケーターなら当然みんな、彼のことを知っている。でも、ひとたびスケボー界を離れてみたら、彼の歩みは堀米選手の陰に隠れ続けていたと思う。今年行われたパリ五輪でも表彰台を逃した。でも、いくら苦しい思いをしても、白井選手は結果を残し続け、日本のシーンを引っ張り続けている。まさに、背中で語る男だ。
世界的スケーターは「同級生」
白井選手と私は、2001年生まれの同学年で、今年23歳になる(私はもうなったけど)。私たちは、世間から見ればまだ若い。でも、「業界」として見たらどうだろう。
5歳でスケボーを始めたという白井選手は18年スケボーに乗り続けているわけだし、私もバイトAKBとしてアイドルになったのが14歳のときだったから、今年で「アイドル10年目」。スケボーもアイドルも、中心の世代は10代に移りつつあって、私も白井選手も、もう十分ベテランの域に入っている。
そんな私は、最近、よく後輩のことを考える。順番に悩み、アイドルとしてもがいている後輩たちの姿に、自分の姿を重ねる。厳しく指導することもあって、たまに自分のことが嫌いになることがある。でも、彼女たちには「アイドルになって良かった」と思う瞬間がいつか来るまで、走り抜けてほしい――と願うからこそだ。
白井選手が地元で練習場を監修して、若い世代のスケーターを盛り立てて、国内のシーンを支えてきたこと。私のあるべき姿がそこにあるような気すらする。
でも、支える側に回るだけではない。今回、白井選手がSLSで初優勝した。ライバルの堀米選手はずいぶん前に達成しているけれど、なんだか私はその事実に勇気をもらう。