20代の部下を「発達障害グレーゾン」と疑う上司がとった「納得の改善策」…「違和感の正体」はこれだった
医師の受診をするメリット
今回のQさんは、上司や同僚に助けてもらいながら改善案を実施したことにより、ミスが改善されて仕事に適応できるようになったものの、自分の特性をより知りたいという思いから受診することにしたようです。その結果、ADHDの傾向がある(グレーゾーン)ということが分かりました。 診断結果を受けたQさんは、医師の「発達障害の”傾向”がある」という言葉に少し戸惑いを覚えながらも、いったんは「解答」が出てスッキリしたということです。 医師の診断が出た件について筆者と相談した結果、Qさんは上司にグレーゾーンであることを伝えることにしました。Qさんの場合は、すでに上司や同僚に配慮してもらっているものの、自分にどのような特性があるのかを上司と共有することは、決してマイナスにならないと考えられたからです。 グレーゾーンの場合、上司や部署などに伝えるかどうか、伝えるのであればなんのため(配慮してほしい点を相談するなど)に伝えるのかを考えたうえで、話ができると良いでしょう。 上司側としては、部下からこのような相談があった場合、まずは、「発達障害」や「グレーゾーン」という言葉だけに惑わされないようにしなければなりません。 Qさんの上司がそうだったように、近年は「発達障害」や「グレーゾーン」がメディアで取り上げられていることもあり、それを「なんとなく」知っている人は増えてきました。しかし、正確に理解できている人は少ないように思います。
困りごとを共有する
発達障害(グレーゾーンを含む)は、ASDやADHDなどにさらに細かく分類されています。しかし、その分類ごとの目立った特性にフォーカスし、「発達障害」と結論づけ定型的な対応策をとっても、「困りごと」の解決は難しいと思われます。 そのため、部下や後輩、同僚などで発達障害が疑われる人がいた場合、自分の知っている範囲の一部の特性から「発達障害」と決めつけたりせず、いったんは「発達障害」という言葉を横に置いて、お互いの「困りごと」に着目すべきでしょう。 なお、配慮してほしいことについて話し合う場合、上司の視点から見た「困りごと」と部下の視点から見た「困りごと」を、お互いに提示してすり合わせると、話がスムーズになります。 たとえば、上司は指示したことをメモして期限内に実行してほしいのに部下はそれができない、部下は聞いてメモをするという同時作業ができない、というそれぞれの「困りごと」を具体的に抽出することで、解決策が見つかりやすくなります。 …つづく<仕事先の失敗で苦情連発…予定通りに行動できない「発達障害グレーゾーン」30代女性の「生きづらさ」>では、主に知られているのは、3つの発達障害の分類について解説しています。
舟木 彩乃(ストレスマネジメント専門家・公認心理師)