「千鳥の漫才はジャズ」超多忙な千鳥が舞台にこだわり続ける理由
ゴールデンから深夜まであらゆる時間帯でお笑い要素の強い番組に携わり、テレビの世界を席巻している千鳥。いまやお笑い界屈指のスターとなった2人だが、漫才師として舞台に立つことにはこだわりを持っている。超多忙な彼らが、今なお、客前でネタを続ける理由とは?(取材・文:ラリー遠田/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
クセになる大悟の「しつこい」ボケ
千鳥のネタ作りは、会議室で顔を合わせて、2人で話してみるところから始まる。 「たとえば、大悟が『変な天ぷら屋するわ』って言ってから、2人でアドリブで20~30分ぐらいバーッとしゃべっていくんです。で、面白かったら、その中の5分ぐらいをネタとして採用する。ずっとそんな感じで作ってます」(ノブ) 「よそのコンビに比べたら、ネタ作りの時間は断トツで短いと思います。何となくの設定が思いついたら、それを2人でやるだけなんで」(大悟)
千鳥の漫才の特徴の1つが「しつこさ」である。大悟が同じパターンのボケをあえて何度も続けたり、同じフレーズを連呼したりする。ネタを振って、振って、落とすという三段落ちのセオリーは千鳥には通用しない。落として、落として、落とす。大悟がしつこく絡んでいくほどにノブのいら立ちがつのり、その嘆き口調のツッコミが勢いを増していく。 「ノブがツッコミなので、普通にボケてツッコんでるよりも、ただ同じことをやって『やめぇ』とか言って困ってる方が面白くなるんです」(大悟) 「いいところなのか悪いところなのかわかんないですけど、2人の笑かし合いみたいになっているんです。だから、ボケをいろいろ変えていくよりも、また同じことを言ってる、っていうのが一番笑っちゃうんですよね」(ノブ) 千鳥は観客を笑わせるより先に、相方を笑わせようとする。2人の間に楽しげな空気が生まれると、結果的に見ている人も笑ってしまうことになる。
「緊張しながらネタを詰めていくよりも、2人でヘラヘラしながらやってるときの方が、お客さんも笑ってくれる感じがあるんですよね。その辺も何か変わってますよね」(ノブ) そんな彼らの漫才は、『M-1グランプリ』に挑む今どきの若手芸人に見られるような、短い時間に笑いどころを詰め込んで緻密に組み立てていくスタイルとはかけ離れているように見える。実際、千鳥は何度も『M-1』や『THE MANZAI』で決勝に進んできたが、優勝を果たすことはできなかった。 「うーん、ただ単に苦手だったんです(笑)」(大悟) 「4分ネタを作るのが一番しんどかったですね。いま思えば、長距離走者が無理やり短距離レースに出て、一生懸命、足回してたんですけど、遅い遅い(笑)。10分の漫才をしている方が楽しいですね」(ノブ)