センバツ2023 変化、完成に向け前進 記者が見た智弁和歌山 /和歌山
このセンバツ、智弁和歌山の「日本一」への道は初戦で断たれた。エースナンバーを背負った清水風太(3年)が試合後に見せた涙に、力を発揮しきれなかった選手の悔しさが象徴されていた。ただ、受け入れがたい現実を飲み込んだチームは、更に強くなれると信じる。【大塚愛恵】 昨秋の近畿大会3試合で5本塁打。強打の智弁和歌山の健在を印象づけていた。19日の英明(香川)との試合は、打線に火がつく瞬間を今か今かと待つ展開だった。 二回、連続安打からの2死満塁。三回、1死一、二塁。1点を返してなお1死満塁の八回、最終回の無死二塁。好機の度、アルプスで打者の名前を呼ぶ声には力が入った。しかし、相手投手を攻略するには一歩足りない。残塁は13に達した。 吉川泰地(3年)、清水の継投は機能した。一方、秋からコンバートのあった守備陣。失策に記録されない乱れを含め、「守りからリズムをつかむ」ことができなかった事実も残った。秋の四国王者でありながら、英明には挑戦者としてぶつかる気迫がみなぎっていたことを、スタンドにいながら感じた。もっと前向きに、がむしゃらに――。試合後の中谷仁監督からは、技術を超えた部分で、選手に足りない姿勢を指摘する言葉が出た。 一方、結果は出なかったが、グラウンドでの練習中、互いのプレーを真剣な表情で話し合う様子を見ても、自主性のある選手たちが、より高いレベルを目指して前に進んでいることは実感した。センバツ前、選手たちの日ごろの練習を見守る塩健一郎部長は言っていた。「新チーム発足時は、自分のことで精いっぱいだった。今は仲間のプレーを見たり、声をかけたり、周囲に気を配れるようになった」 「毎日、日本一を目指して練習する。チームが完成に近づく夏までの変化が高校野球の楽しみ」と中谷監督は言う。経験を糧に、選手たちが夏、再び聖地に戻り、ひと味違った姿を見せてくれることを期待したい。