中国で相次いだ無差別襲撃事件 政府が監視を強める「数字」と、漂う“閉塞感”
無差別襲撃事件が相次いだ2024年の中国。中国政府は「世界で最も安全な国だ」と強調し、その傍らで、ある「数字」で国民を徹底的に監視する。中国社会にまん延する不満と、閉塞感を取材した。 (NNN中国総局 森葉月)
■相次ぐ無差別襲撃事件 背景に見えたある「数字」たち
2024年、中国各地で相次いだ無差別襲撃事件。9月に広東省深セン市の日本人学校で、男が日本人の男子児童を刺殺。さらに11月には同じ広東省珠海市で、男が車を暴走させ35人が死亡。その後も江蘇省の職業専門学校で学生らが無差別に切りつけられ8人が死亡するなど、各地で残虐な事件が相次いだ。 肝を冷やした習近平国家主席は、事態を深刻に受け止め異例の指示を出した。地方政府に対し、国民の安全と社会の安定を図り、治安対策を徹底するよう伝える。その指令に“ある特徴”が見えた。台湾メディアや香港メディアによると、中国政府独自の解釈で罪を犯しやすい人をさまざまな「数字」で表現したのだ。 ⚫「3低3少」所得・社会的地位・社会的人望が低いこと。人付き合いや社会と触れあう機会、そして不満を口にできる機会が少ないこと。 ⚫「4無5失」「4無」…配偶者/子供/仕事/持ち家などの資産がない人「5失」…投資や貯金に失敗/人生で失意に陥る/正常な人間関係を失う/安定したメンタル状態ではない、など… ⚫「8失人員」職を失った人/男女関係で失意に陥った人/人間関係で不和を抱える人/精神的なバランスを失った人/子供のころ不遇だった人、など… これらのタイプに1つでも該当する人物を、地方政府が徹底的に監視し、管理を強化して、犯罪の芽を摘む作戦だ。 しかし、子供のころの成育環境が整っていなかったり、恋愛に失敗したりした人が、いわば「犯罪者予備軍」のような扱いを受ける恐れはないのだろうか。 いずれの「数字」にも共通してみられたのが、社会との接点や愚痴を言える環境すら整っていないという“閉塞感”だった。 中国政府が襲撃事件の原因や動機を言及しないなか、中国経済の困窮が生んだ悲劇だとの指摘も聞こえてくる。しかし、それだけではない、自由にモノが言えない空気感に我慢の限界がきているという若者たちの声が聞こえてきた。