【虎になれ】オアシスはないかも 大混戦のセ界で生き残れるか阪神
<阪神0-1中日>◇25日◇倉敷 苦しい。阪神はラスト9回に見せ場こそつくったが結局、0封負け。打てない悩みはこの日も続き、貯金は1となった。決勝打は昨年限りで阪神を自由契約になり、中日に入った板山祐太郎だ。決勝適時打含む3安打猛打賞に6回は失策も見せ、大暴れ。元猛虎戦士の奮闘は歓迎したいが、無得点の敗戦では、なかなかその気分にもなれない。 倉敷といえば思い出す。03年7月8日。倉敷出身の闘将・星野仙一に率いられた阪神はここで広島に快勝し「マジック49」を点灯させた。冗談抜きに当時、多くの虎党が「生きている間にもう阪神の優勝はないかも」と感じていた状況を吹き飛ばし、18年ぶりのVをもたらした。 闘将は言うまでもなく現役時代は中日のエース。指揮官としても中日を長く率いた。そして02年、電撃的に子ども時代にファンだった阪神監督となり、2シーズン目に優勝させた。その地元・倉敷でのTD戦は7年ぶり。星野に縁の深い両軍の一戦を祝うかのように同球場として過去最多の3万417人が詰めかけた。多くが虎党だったが、その前での悔しい敗戦だ。 03年の虎番キャップ時代、星野とは毎日のようにお茶を飲んだ。野球や私生活など、いろいろな話をした。その中で、おやおやと思ったのはこんなことだ。 「中日のとき、阪神戦はオアシスやったなあ。前のカードで負け越してしんどいな、と思ってても次が阪神戦かと気づいたらホッとしたわ」。いまは阪神監督なのにそんなことを…とドキドキしたが、星野は豪快に笑い飛ばした。 それから21年。星野は鬼籍に入り、そして昨年、阪神は指揮官・岡田彰布の下、リーグ優勝はもちろん、38年ぶりの日本一まで達成。時代は変わった。 そして今季、阪神は中日に試合前まで6勝2敗1分け。セ5球団の中では最多の貯金4をかせいでいた。5割近辺で推移していることを考えれば「オアシス」は言い過ぎにしても、助けられていたかも。だが大混戦のセ、もうそれは期待できないかもしれない。 この日は小笠原慎之介らの前に敗戦。かろうじて2位は保ったが首位・広島には3ゲーム差と広がり、5位浮上の中日に2・5ゲーム差に迫られた。敗戦後の岡田は「今までの“0”とはちょっと違うよな」と何かを感じた様子だが、とにかく意地と結果を見せてほしい阪神打線である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)