日本に情報機関はないのか? “成果”は公開されている
中国で日本人2名が「スパイ行為」に関わったとして今年5月に中国公安当局に拘束された。日本も、外国で情報収集行為を行っていることがこのことにより広く知られるようになった。政府は「スパイを送ったことはない」と否定しているが、活動が行われていることは半ば公然の秘密。その“成果”はだれにでも手に入るような形で公刊されているからだ。
外国をも対象にする日本の情報収集機関
この拘束を受けて、菅義偉官房長官は「詳細を控える」とし、スパイを送ったかどうかについては、「我が国はそうしたことは絶対ない。これはすべての国に対して同じことだ」(『朝日新聞』9月30日夕刊より)と発言した。 しかし、共同通信の10月3日配信記事によると、2名の日本人は公安調査庁の依頼を受けて中国国内で中国の軍事情報や北朝鮮の動向を収集していたという。ここで、日本の情報機関は国内だけではなく国際情勢も対象にしていたと気がついた人も多いだろう。 日本には、主だった情報機関として、警察庁警備局(この下に警視庁公安部がある)や公安調査庁がある。ほかにも、内閣情報調査室や、外務省の国際情報統括官組織、防衛省の情報本部があり、内閣情報会議を構成している。 多くの人に「情報機関」として認識されているのは、警察機関の中にある、警視庁公安部や公安調査庁である。一般的なイメージでは、これらの部門は新左翼といった過激な政治セクトや、日本共産党を対象にしていると思われている。しかし、それだけではなく、国内でもオウム真理教や労働運動・市民運動、最近ではヘイトスピーチを街頭で訴える「行動する保守」も対象にしている。 だが、これらの機関は、国内の動向だけをチェックしているのではない。外国の動向もチェックしている。警視庁公安部では、ロシア・東欧地域や中国・朝鮮を以前から監視しており、アメリカ同時多発テロ事件以降は中東情勢の情報も収集するようになった。公安調査庁でも、同様の地域の監視・情報収集を行っている。