【漫画家に聞く】「からあげ」が「ザンギ」に変わる瞬間って? SNS漫画『シュレーディンガーの揚げ物』が色んな意味でアツい
北海道のご当地グルメ・ザンギがきっかけとなり、仲良くなった男女2人の関係を描いた漫画『シュレーディンガーの揚げ物』が2024年8月にXで投稿された。唐揚げ好きな女の子との関係を築いてきた、北海道出身の鉾田。彼女の食べる様子を見ながらこぼれた言葉は意外なものでーー。 「からあげ」が「ザンギ」に変わる瞬間って? 色んな意味でアツアツな漫画『シュレーディンガーの揚げ物』 本作の作者・藤沢チヒロさん(@uwabamic)は北海道に住みながら創作活動をつづける人物。ザンギを題材とした本作を創作したきっかけ、ザンギについてなど、話を聞いた。(あんどうまこと) ーーこのたびの投稿には多くのコメントが寄せられるなど、反響の大きな作品かと思います。 藤沢チヒロ(以下、藤沢):唐揚げとザンギの定義に関する会話はネットでも実生活でもよく見られるものなので、本作の反響の大きさにつながったのだと感じます。とくに北海道の人は「ザンギはこれ!」といった一家言を持っている人が多く「自分にとってのザンギの定義はこれだ」と話したくなるのかもしれません。またザンギについて話すことそのものが楽しいといった側面もあると思います。 ーーザンギについて詳しく教えてください。 藤沢:味付けのバリエーションがあることはもちろんのこと、鶏肉ではなく魚のすり身を用いた揚げ物もザンギとして売られていることもあります。 北海道のローカルチェーンコンビニ「セイコーマート」でも唐揚げとザンギ、フライドチキンが別々の商品として販売されたりするので、改めてザンギとはなにが違うのだろうと友達と話したりしています。実際に食べ比べてみると味付けも異なっているので、いつかチャンスがあれば「セイコーマート」の方に違いや定義をお聞きしてみたいです。 ーーザンギの定義とともに交際・結婚を決めるラインもだれかと話すことが楽しい話題だと感じました。 藤沢:私は「唐揚げ」と「ザンギ」に製法のちがいはない派なので、本州で「唐揚げ」と呼ばれていたものが北海道に行くと「ザンギ」になると思ったところから、人間関係でもなにかが変わる瞬間があれば面白いと思い本作の物語を考えました。恋愛に関する話は後からついてきたような感じです。 本作の2人に対して読者の方からは好意的な反応が多く、とくに「幸せになってほしい」「2人の物語のつづきが読みたい」と言ってもらえたことがすごく嬉しかったですね。 ーー何事にも真面目に考えて、少し天然なところもある……。彼女のキャラクターが魅力的でした。 藤沢:唐揚げがザンギになる瞬間を見るために新幹線をつかって北海道へ行くなど、些細なことを大きなイベントとして楽しめる女の子だと思います。これからも本作の2人は些細なことを楽しめると思いますね。 ーー「アド街ック天国(以下、アド街)」のくだりが好きでした。 藤沢:遠くに住んでいる友達と「アド街」を見ながら電話やLINEでやり取りしていたことがありました。一緒に住んでいなくても、一緒に同じTV番組を見ながら楽しんだ思い出があるので「アド街」は好きな番組です。もちろん一緒に住んでいる人同士で見ても楽しい番組だと思います! ーー青函トンネルの途中、2人でザンギになる瞬間を体験するエピソードがロマンチックだと感じました。 藤沢:当初は2人を飛行機に乗せてみようかと思っていたのですが、空からだとザンギになる瞬間がわかりづらいと思い新幹線を選びました。実際に北海道新幹線に乗ると「これから青函トンネルに入ります」「現在はちょうどトンネルの真ん中あたりです」といったアナウンスや表示があったので、漫画の題材としてつかえると思いました。 ーー「チキン弁当」のからあげなど、食べ物を描くなかで意識したことは? 藤沢:食べ物を描くことは楽しいので、単純に楽しみながら描いています。読んだ方が、作品に登場した料理を食べたくなることが食べ物を扱う漫画の役割だと思うので、自分自身も描きながら食べたいなーと思いながら描いていますね。
あんどうまこと