初の代表選出、FW工藤の心の成長
エースストライカーの証 「9番を背負うのは僕しかいない」
工藤は今シーズンから、元ブラジル代表のカレカや今も尊敬してやまない北嶋秀朗(現J2ロアッソ熊本)をはじめとする、レイソルの歴代エースストライカーの象徴である「9」番を背負っている。北嶋の移籍で空き番となった昨シーズン終了後に、フロントに直訴して変更させた経緯をこう振り返ったことがある。 「9番をつけるのは僕しかいない、絶対に僕が背負うんだ、という強い気持ちでいたので」。 トップチームでプレーして4年目。確固たる結果を残したことで自覚が芽生え、栄光の背番号9を自分の色に染めながらさらに輝かせるという覚悟をも決めたのだろう。工藤の特にメンタル面における成長の軌跡を間近で見てきたレイソルのキャプテン、MF大谷秀和はこう証言する。 「エースは自分だという強烈な意識がありますよね。もともと責任感が強く、ゴールを奪うことに対して貪欲な選手でしたけど、自分が試合を決めるんだ、という自覚が今までよりも出てきている。自分から見てもすごく頼もしい存在になったし、一方でもっと、もっとできるはずという期待感もありますね」。 今まさに成長を遂げている最中であり、代表抜擢というビッグニュースが触媒となって、工藤の進化のスピードが一気に上がる可能性もある、というわけだ。 5月3日に組まれていたサンフレッチェ広島とのリーグ戦がACLとの関係で29日に敵地で行われることに伴い、工藤の代表合流はブルガリア戦当日となる。コンディション的にもブルガリア戦出場は難しく、引き分け以上でW杯切符を獲得できるオーストラリア戦では23人のベンチ入りメンバーそのものに入ることすらも厳しくなるだろう。それでも工藤を招集した点に、ザッケローニ監督の期待の高さがうかがえる。一方で60歳のイタリア人指揮官は、こう付け加えることも忘れなかった。 「工藤選手も東選手もともにユーティリティープレーヤーで、特筆すべきはゴールに向かっていく時によさを発揮する、迫力というものを見せてくれる点だ。同時に言いたいことは、継続した成長、さらなる成長というのを見せてほしいということだ。これまでもそういった選手がいたが、全員が(その後に)そういう成長を見せているわけではない。現在の彼らの年齢と今の実力とを合わせてみると、いいレベルにいるということは言えるものの、代表チームに一度呼ばれたからといって常連になったとは言えない。まだまだ代表チームの常連に食い込むほどの実力をつけてはいないということだ」。